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夏休み-06 [シトワイヤン-18]

今、残ってるのはテントで泊まって行く子達です。
グループに分かれておしゃべりの時間、僕らは青年部副部長山上さんのグループを選びました。
山上さんは色々な質問に答えてくれる人です。

「中川君と清水さんは初めてなのかな?」
「はい、よろしくお願いします。」
「どう、苗川の印象は?」
「思っていたよりうんと良いです、大人も子どもも皆仲良しで、鹿丘小の子と新学期から馴染めるか不安でしたが、もう仲の良い子が何人も出来て、五年生リーダーの武田くんは頼りになります。」
「はは、確かに正一は頼りになる、どんどん頼って構わないが、時には手伝ってあげてね。」
「はい、もちろんです、ここでは色々な事を助け合いながらやっているって、中学生の方々が教えてくれました。
中学生の人に教えて貰うのも、低学年の子に気を配るのも、私にとって新鮮な経験です。」
「やはり都会の子はそうなんだね、遊ぶのは同学年ばかりだったの?」
「はい。」
「それには一つ問題が有ってね、実際の社会は色々な年齢の人で成り立っているでしょ。
大人に成った時、同じ学年の人としか付き合えなくては困ると思わないか?」
「ふふ、武田君にも同じ事を言われました。」
「あっ、失礼、もう分かって来てるのだね。」
「武田君と歩いてると、大人も子どもも、中学生も高校生も関係なく声を掛け合っていて。
何時も孫の面倒を見てくれて有難うというお年寄りから飴を貰ったこともあります。」
「まあ、正一は年上に可愛がられるタイプだからな。
どう、何か疑問に思っていることで正一に聞いてない事が有ったら答えるけど。」
「さっき、市民政党若葉の話が少し耳に入りまして、私は苗川市民になったと思うのですが市民政党って苗川だけではないのですよね。」
「良い質問だね、ややこしいのだけど、市民という言葉には二つの意味が有るんだよ。
市という行政区分に対する市民という表現は国に住む人を国民と呼ぶのと同じ感覚だけど、もう一つが元々の意味で、主体的に政治的社会集団を構成する人のことと言えば良いのかな…。
さて、清水さんと中川君は難しい話は苦手かな?」
「僕は知りたい派です。」
「私もです。」
「それは嬉しいね、このグループはそういう子向けなんだ。
昔のヨーロッパでは絶対王政と呼ばれる、国王が絶対的な権力を握っていた時代が有ってね…。」

山上さんは絶対王政と日本の比較、市民革命の話など、僕らを飽きさせない調子で話してくれて。

「だから国王に絶対服従していた人達は国民では有っても市民では無かったのさ、自分から政治を考える集団の一員ではないからね。
清水さんの疑問に戻るならば、正一は良く学び社会集団の一員として自分が何をすべきか考えているから、市民と言える、大人でも自分の事しか考えられていない人は市民とは呼べないんだよ。」
「選挙に行かない大人は苗川市民では有っても、本当の市民では無いということですね。」
「中川君、その通りだ。」
「僕には選挙権が無いけど、苗川に貢献出来たら本当の市民に成れる、あっ、このグループの人達にとっては当たり前のことでしたか。」
「安心して良いよ、僕も今日、山上さんの話を聞かせて頂くまで、市民という言葉に、もやっとしていたんだ。」

眠くなる子が出始めたところで、山上さんとの時間は終わりました。
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