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夏休み-01 [シトワイヤン-18]

僕は、武田正一、鹿丘小の五年生、今は充実した夏休みを過ごしています。
神社のお祭りでは緊張することも有ったけど、六年生リーダーの万里ちゃんからは合格点を貰えたし、万里ちゃんが決めてくれた夏休みの宿題も順調で、えっと、ノープロブレムです。
今日は苗川市民祭の小中学生向けイベント、会場の小学校には転校予定の子も来ていて、子ども同士の交流が始まっています。

「ねえ、このグループは鹿丘小へ転校予定の子が一緒だって聞いたのだけど。」
「ええ、私達は引っ越しを済ませたわ、この子達は違う小学校からなんだけど、お父さん達が同じ職場で働き始めているのよ。」
「そっか、僕は鹿丘小五年生リーダーの武田正一、よろしくね。」

十二人のグループの半分は転校予定、残りは鹿丘小の児童ということで、自己紹介をし…。

「ねえ、鹿丘小ではいじめがないってホントなの?」
「今の所はね、転校生にいじめっ子がいたら嫌だな。」
「そっか、でも、どちらかと言うといじめられてた子が多くなりそうだから、気を付けてあげなさいって親に言われたわ。」
「あっ、四月からの子にもいたよ、ほら、今、水鉄砲で遊んでるグループの青い服の子。」
「へ~、普通に可愛い子じゃん、友達になれるかしら。」
「越して来た頃は暗い感じの子だったんだけどね。
逆に君みたいな子は、田舎暮らしに抵抗はなかったの?」
「そりゃあ、友達と別れるのは辛かったわよ、でも下見に来た時の山の風景や…、知らない大人は怖い人だと思って目を合わせず距離を置くように言われてたのに、苗川の人達は全然そんな雰囲気じゃなくてさ。」
「苗川しか知らないから良く分かってないんだけど、お祭りの指導をしてくれる人は苗川の大人は特別なんだって言ってるよ。」
「うん、越して来て間が無いけど、満員電車にはもう耐えられないと話してたお父さんに笑顔が増えたのは事実だわ。」
「あっ、万里ちゃんだ。」
「万里ちゃ~ん!」
「手を振ってくれてる女の子は僕らのリーダーでね。」
「知ってる、映像で見たわ、思ってたより小さくて可愛いのね、十万十二歳、苗川のアイドル、大人達が夢中になってるとか。」
「はは、万里ちゃんは僕らのお母さんだったりお姉さんだったり先生だったりするんだ、先生のいう事を聞けない低学年の子でも、万里ちゃんの言う事には大人しく従うんだよ、転校して来て嫌な思いをしたら僕に話してくれて良いけど、万里ちゃんに相談すれば解決が早いからね。」
「へ~、テレビ番組だから大袈裟に話してるのかと思ってたけど、ホントに人気者で頼りにされてるんだ。」
「十万十二歳説は大人が勝手に言ってることで、あまり好きじゃないみたいだけど、苗川のアイドルなのは間違いなくてね、うちにも舞姿の写真が飾ってあるんだ。」
「何となく分かるわ、周りの人達の表情が違うし…、あっ、会場中の人達が注目して笑顔になってるような…。」
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