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お祭り-09 [シトワイヤン-17]

市民祭の一環として、普段は市民政党若葉のシステム上で議論している人達のグループが苗川で顔を合わせてのフォーラムが開かれている。
その中で鹿丘小学校の活動に注目しているグループに呼ばれ参加する事になった。

「智里さんが『格好の良い子どもになろう』と提唱し始めた頃の小学校はどんな感じだったのですか?」
「他を知りませんが、普通の田舎の小学校だったと思います。
ただ、高校生になって他の生徒の話を聞いていると、純粋な良い奴ばかりだったみたいです。
大人達が変わろうとしてるの感じ取ってた子どもは私だけではなかったですし。」
「大人達の変化はそれほど顕著だったのですか?」
「本間市長の影響を一番早く受けたのは、お祭りの実行委員なのですが、小学生の子を持つ親は地域活動に参加する人が多いのです。
私の両親も『あまり肩ひじ張らずに子どもから尊敬される親を目指す』というテーマで討論していたそうです。」
「それを受けての『格好の良い子どもになろう』だったのですね。
高校生になられた今は、その時の意識改革をどう捉えていますか?」
「そうですね、小学生ながらに共通のテーマを持った事は本当に良かったと思っています。
スタートした頃は本当に試行錯誤でしたが、すでに鹿丘小の伝統となり妹達が引き継ぎ発展させてくれています。
これから転校生が増えますので形が変わるかも知れませんが、転校生達がどんな気持ちで田舎に越して来るにせよ意識改革の意味は強くなると思っています。」
「万里さんはそんな意識改革が進んだ鹿丘小で成長されたのですね。」
「いえ、私達も低学年ながら意識改革を進めてきました、むしろ高学年より視野の狭い子が多い訳で姉達とも色々相談したのです。」
「智里さんは低学年をどう見てたのです?」
「万里の言う通り、低学年は内面の格好良さというテーマを考えるには早いのですが、周りの環境が整っていれば効果的な教育が出来ると思っています。」
「鹿丘小ではその環境を作る事に成功したということですね。」
「はい、小学一年生だった万里は私達や大人の話を理解し、周りの子ども達に伝えてくれました。
ただの美少女ではないのですよ。」
「万里さんは、本当に理解していたのですか?」
「そうですね、姉や大人達の話に耳を傾けるのは好きでしたし、姉が正義感溢れる人ですので、私も周りの子の面倒を見ることを自然としていました。
ただ、鹿丘小で『格好の良い子どもになろう』が進んだのは決して特別なことではなく、単に児童の多くが『格好の良い子どもになろう』を意識しているからだけだと思っています。」
「それを意識させる切っ掛けを作って来たと考えれば宜しいですか?」
「はい、大人達もして来たことです。」
「私の住むエリアでも『格好の良い子どもになろう』を根付かせたいと考えているのですが、子どもの自主性任せでは難しい気がしています。
どう、切っ掛けを作れば良いと思いますか?」
「小学校へ見学に来られる方と話す機会が有り、同様の話を聞きますが、私は、大人扱い出来る子を見つけて大人扱いすることから始めてみては、と提案させて頂いています。
私達はまだ子どもで大人では有りませんので、すべてを大人扱いする必要は有りませんが、小さなことでも、それが増えれば。
苗川には私を大人扱いする大人が大勢いるから、今、この場に私がいるのです。」
「子どもによっては、大人扱いされることで成長する、と考えれば良いのでしょうか?」
「もちろん、背伸びをさせ過ぎて行けません、大切なのはバランスです。」
「はい、気を付けます。」

それから暫く大人達は万里から有難い言葉を頂くのに夢中になる。
話してる内容は凄く特別なことでも無いのだが万里が話すと心に響く様で、会が終わる頃にはすっかり主役となっていた。
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