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お祭り-05 [シトワイヤン-17]

市民祭での私の役目は主に相談に応えること。
中三だった昨年は、仕切る立場だったが今年は一歩引いてスタッフ達を支える立場。
高校生スタッフと大人のスタッフを繋いだりした。
ただ、市民政党若葉党支部システムに送られて来る準備状況の報告に問題は無く、思っていたより学習が捗り、市民祭初日のオープニングイベントを迎える頃には、夏休みの課題を終え予習に重点を置くことが出来た。

「お姉ちゃん、今日のオープニングイベント、途中で着替えるのよね、服は持ってかなくて良いの?」
「そっちは愛華さんとこのスタッフ任せ、今日の万里は着せ替え人形となって大人達のされるがままとなり、舞台に華を添えるのよ。」
「客席で見てるだけの筈だったのに。」
「うん、始めは予定に無かったのだけど、客席にいるより舞台上の方が安心出来ると警備担当に言われて断れなかったのよ。」
「愛華さんの陰謀じゃなかったの?」
「その匂いもするし客席を確保したいとか、疑い出すときりがないのだけど、万里が席に辿り着くまで何人の人に声を掛けられるかを想像したら、関係者の控室や舞台にいた方が楽だという結論に達したのよ、客席の暇人と違ってスタッフには仕事が有るでしょ。」

出掛ける前は家でこんな話をしていたのだけど、会場入りして、早速テレビ局のクルーが取材に来たことを考えると、警備担当の判断は間違っていなかったのだと思う。
オープニングセレモニーでは姉妹で巫女さん風の衣装を纏い、市民祭の開会宣言をした。
後は…。

「お姉ちゃん、市民合唱団、随分上手になったわね。」
「ええ、移住して来た人の中に指導の上手な人がいてレベルアップしたとは聞いてたけど、思ってた以上だわ。」

合唱団の演奏が終わり、舞台袖で…。

「万里ちゃん、去年よりは上手になったでしょ。」
「ええ、とっても。」
「万里ちゃんが見ててくれたから安心して歌えたのよ。」
「俺は、愛の歌を万里ちゃんに向けて歌ったんだ。」
「はは、禿親父では迷惑よね。」
「なんか変な感覚だけど、子どもの頃、お母さん見ててって縄跳びしたりしてたの思い出したな、万里ちゃんに見てて貰えて。」
「私も嬉しかったわ、お守り代わりに万里ちゃんの写真を持ってたけど、ご本人がいてくれて。」
「はい、皆さ~ん、控室へ移動しますよ~。」

「えっと、万里って、市民合唱団の何?」
「知り合いが多いかな。」
「それだけ?」
「指揮をしてみえた方は移住して来た方だけど、音楽の授業で合唱指導して下さったの。」
「そういう交流も有るのね。
次は…、中学のブラスバンド…。」
「万里ちゃん、見ててね。」
「お~、ラッキー、万里ちゃんが見ていてくれるなら何時も以上の演奏が出来そうだぜ。」
「今日の演奏は万里ちゃんに捧げるわ、みんな良いでしょ。」
「おう、気合が入るぜ。」

私の大切な妹は、知らぬ間に特別な存在に…。
顔見知りばかりだが、私には軽く会釈する程度なのだ。
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