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鹿丘小学校-01 [シトワイヤン-16]

私は鈴木万里、苗川市立鹿丘小学校の六年生になったばかり。
今日は始業式だけど、今までの始業式とは大きく違う。
小学校に入学してから始めて転校生を迎えることになったのだ。
今までやった事のなかった、クラスでの自己紹介は少し新鮮だった。
先生の話が終わってから、隣の席になった転校生に話しかけてみる。

「あのね、私達のクラスが転校生を迎えるのは初めてなの、だから戸惑う事が有るかも知れないけど、えっと、仲間になって欲しいわ。」
「もちろんさ、鈴木さんよろしくね。」
「じゃあ、万里って呼んで、クラスには同姓が多いでしょ、だから誰も鈴木さんなんて呼ばないの、それで、翔太くんって呼んでも良いかな?」
「女子からそんな風に呼ばれたことないから少し照れるけど、俺としては早く馴染みたい、万里さん、色々教えてね。」
「ねえ、お父さんは男子ならクワガタの居場所とか教えて上げれば良い、とか話していたけど、そういうものなの?」
「あっ、そうか、キャンプに行った時、探しても全然見つからなかった、でも苗川で暮らせば…。」
「やはり、田舎暮らしに抵抗は有る?」
「そうでもない、住む所は普通に町、山が綺麗で何が不便なのかまだ分からないよ。」
「お姉ちゃんは電車の本数が少ないとか好きなシンガーのライブに行けないとか言ってるわ。」
「俺には関係ないかな。」
「あっ、そろそろ時間ね、運動場へ移動しましょ。」

運動場にみんなが集まって来ると、全校児童が二十一人も増えたことを実感する。
さて、私の出番だ。

「みんな班に分かれて、六年生は転校生がどの班になるのか確認してあげてね。」
「おう。」
知らない子は転校生だから…。
「えっと、君の名前は?」
「ほんだこうじ。」
「由里、本田浩二君はこの子よお願いね。」
「あらっ、可愛いわね、お姉さんちは近くだから一緒に帰ろうね。」
「うん。」

「万里、班の方は大丈夫そうだよ。」
「そうね、では…。
みんな~、ちょっと聞いてね~。」
「へえ、万里さんが仕切ってるんだ。」
「翔太君、万里は皆の頼れるお姉さんなんだよ。」
「斗真君は同学年だろ?」
「はは、たまに算数を教えて貰ってるかな。」
「なるほどね。」
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