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市民-02 [シトワイヤン-12]

産廃の問題を含め、社会問題は党のサイトで意見交換がなされている。
その中で出ているのは、行政の限界と企業の有り方、そして市民として出来る事。
五月の連休、苗川の居酒屋で。

「いらっしゃいませ。」
「おお~、我らが党代表、苗川に来られていたのですね。」
「はは、元を付け忘れないで下さい、元代表ですよ。」
「苗川の市民にとっては…、なあみんな。」
「肩書なんて何だって良いよ、俺達のリーダーなんだから。」
「どうぞ、こちらの席に、たちの悪い酔っ払いは私が排除させて頂きますのでご安心下さい。」
「みっちゃん、自分だけ良い子になってずるいぞ。」
「ふふ、愛華さん、今日のお召し物は新作ですか?」
「ええ、新緑に合わせたデザインです。」
「あっ、イメージ出来る。」

挨拶代りのおしゃべりをし乾杯をした後は…。
「今日の話題はどんなことでしたか?」
「清香さん、今日は真面目に行政の限界についてです、これから苗川の大改造が始まりますが、限られた財源という事が有りますし、大災害の時は市の職員だけで対応しきれないという問題が有ります。」
「何か面白い意見は出たのですか?」
「市営の会社を作り、普段、社員は市の財源を潤し、災害時は復旧の応援に入るとかどうです?」
「市営でなくとも、うちの社員には防災訓練の一環で災害時の行動規範を定めています。
災害時は、企業の利益を優先することなく市民生活の応援をすることを明確にしています。」
「流石、清香お嬢さま、しっかりされているのですね。」
「だな、俺んとこは、そんな決め事全くない、社長に進言してみるかな。」
「清香お嬢さま、苗川大改造で耐震化は進むでしょうが、地震はいつ起きてもおかしくありません、行政が地震に対する建物倒壊危険度を示し備えを啓蒙しても、市民がそれを受け流していたら無意味だと思いませんか。」
「苗川は防災訓練への理解度が高いとお聞きしたのですが。」
「それでも、無頓着な奴もいるのですよ、倒れそうな家に住んでいて、まあ自己責任という事になるのでしょうが。」
「行政としては啓蒙活動をした、でも住人はそれに応えなかった、その結果、という行政の限界なんて話をしていたのですよ。」
「そんなに危険そうな家なのですか、もし倒壊して隣家に被害が及ぶ可能性が有るのなら行政指導も有りです、ただ強制力が無いのも事実です。」
「それなら消防団の団長が話した方が早いだろう、役所の、なよっとした連中が話すより効果が有りそうじゃないか。」
「団長の仕事を増やすのは悪いよ、消防団の一員という肩書が通用するのなら俺が話をしてみようか。」
「団長に話をしてからなら問題ないと思う、消防団の役目と考えて良いんじゃないのか。」
「何らかの肩書は有った方が説得し易いですものね、建て替えを勧めるのですか?」
「耐震補強です、一人暮らしの年寄りなので建て替えは勧められません。」
「家に愛着が有るのでしょうが、老人ホームなどの選択肢は有りませんか?」
「そうですね、安易に考えていました、う~ん、民生委員と相談すれば良いのかな。」
「そういう話ならうちの女房が詳しいんだ、呼ぼうか?」
「それは助かるが良いのか?」
「いや、清香お嬢さまがいらしてたと後で知られたら確実に機嫌が悪くなる、俺だけが呼ぶのは良くないとは分かっているが、すまん、俺んちの平和の為にも呼ばせてくれ。」
「他言無用で一人だけなら良いだろう、なあ、みんな。」

居酒屋には居酒屋の掟が有る。
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