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脱東京-01 [シトワイヤン-11]

市長の話を伺う時間が終わり。

「愛華、今日は随分雰囲気の違う衣装なのね。」
「はい、Citoyenの新作野良着です、機能性を重視しつつファッション性を兼ね備えています。」
「田圃でそれを着てたら目立つでしょうね。」
「そこが狙いなんですよ、田畑に咲く一輪の花、奥さまがどこにいらっしゃるのかすぐ分かった方が良いじゃないですか。
作業中に具合を悪くされる方も見えると聞きまして思い切った色にしたのです。」
「そっか、でも、汚れも目立ちそうだわ。」
「洗い易さも追及しているのですよ。
そして皆さんにお知らせです、Citoyen苗川店では、こんな苗川限定商品を明日から順次販売して行きます。
キッズからシニア向けまで一気に種類を増やしましたので宜しくお願いします。」

Citoyen直営店はすでに大都市圏中心に数店舗オープンしているが、人口の少ない地方都市では苗川が初めて。
開店から一か月、大きな売り上げを維持しているのは、苗川に党員が二万人以上いるという証。

「明日からの企画に合わせたのね、そっちは清香の担当だったかしら。」
「はい、今回の市民祭は番組の脱東京企画を知った女子高生の発案です。
春休み期間だけの、桜の様にパッと散る様な企画で良いからと募集した結果、多くの企画が持ち込まれました。
それを苗川の大人達が全面的にバックアップ、明日のオープニングは番組でも紹介させて頂きます。」
「脱東京企画に関係するのね。」
「ええ、発案者の女の子は、東京ってなんだろうと考えたそうです、憧れる気持ちは有りながらテレビで見る人ごみの風景には抵抗を感じたそうで。
そんな中、苗川が若者にとって魅力ある町だったらと。
それには東京の真似をするのではなく、苗川から発信するぐらいの、まあ、気持ちだけでも、だそうです。」
「そうね、ファッション、流行なんて一部の人に踊らされてるだけだもの。
その一部の人が原宿ではなく苗川を選んだら、規模は小さくても何かが変わるのかも…。
でも、大きな儲けが期待出来ないと動かないでしょうね。」
「実行委員の人達は苗川独自の文化をこれから作って行けたらと話してみえました。」
「その文化が世間に受け入れられるかどうかが問題なのよね。」
「たとえ広がらなかったとしても、個性的な町になり、町の活気に繋がる気がします。」
「う~ん、そうね、でもあの踊りは…。」
「ふふ、梅子姉さん目線では少し残念な企画も有りますが、土日は是非苗川へ遊びに来て下さい。」

金曜日の午後、番組に合わせてオープニング、土日を中心に発案者曰く学園祭の様な市民祭が始まる。
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