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地方支部-08 [シトワイヤン-10]

夏休みに立ち寄って気に入った苗川市、俺達は本間市長の市政を後押しすべく、放送局に様々な企画を持ち込んだ。
表向き『瀬田和馬が十万円で購入した土地』をどうするかで始まった企画会議では、春休みの一か月間、梅子姉さんとのレギュラー放送を苗川市からと提案。
全国放送を田舎の町から発信したら、どんなデメリットが有るのか、という実証実験だ。
メインテーマを『脱東京』において、オフィスが田舎に移転したら、東京から移住した社長が市長になって、といった企画や話題を提供した結果採用された。
番組視聴率は良いがそれに甘える事のないマンネリ防止策でも有り、視聴率が良いからこそ予算も出る。」
梅子姉さんは始めから乗り気でスケジュール調整、他の番組出演依頼は苗川市でなら受けると徹底してくれた。
彼女自身が気分転換したいと話してくれた言葉に偽りがないことを俺は知っている。
テレビ局も、この企画そのものをドキュメンタリー番組に仕上げることにした。

「ねえ和馬、番組を脱東京させるデメリットは大きいのかしら。」
「スタッフや機材面では効率が悪くなるんじゃないのかな、ゲストを呼びにくくなるかも知れないね。」
「番宣ゲストは勝手に来るんじゃないの。」
「あっ、そうか…、なあ、あの人達のギャラはどうなっていると思う?」
「それなりにおサイフが有るんじゃない、それより費用面ではスタッフの宿泊がネックになると思ってたら、空き家リフォーム企画とはね。」
「党員の協力が得られそうだったからな、すでに番組ADが自分の住む部屋を自分でリフォームしながら撮影してたり、業者が作業する部屋も簡単に撮影して、四月以降の入居希望者を募るそうだよ。」
「入居希望者がいなかったらどうするのかしら?」
「オフィスを田舎に移転させる計画が進んでいるから大丈夫、俺達の企画は四月以降も続くから、局としても常駐スタッフを置くことになるだろう。」
「思い切った企画よね、一つの地方都市を番組で強く後押し、他の市町村から妬まれそうだわ。」
「まあ、参考にして貰うという事で、梅子姉さんは四月以降も地方都市からが良いって話してたけど。」
「和馬は大学が有るから次は夏休みでしょ。」
「場所を選べば通えると伝えておいた、市民政党の党員が多い所という条件を付けてね。」
「単位は余裕?」
「ああ、多分大丈夫だ、地方の支部を盛り上げたいしね。」
「ついでに安く土地を手に入れてとかも考えているのでしょ。」
「勿論さ、土地を活かせなかったら過疎化は進む一方だろ。」

『脱東京』というテーマは夏休みの旅行から考えていた、それを東京からではなく人口三万の地方都市から発信することに意義が有ると思っている。
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