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夏休み-05 [シトワイヤン-08]

俺達の旅行は七人の市長に会い、七つの市を番組で紹介することがメインだが、番組としては何の関係もない七つの市を繋ぐという企画も。
まずは伝統工芸の髪飾りを次の訪問先で販売という訳だ。

「芳樹先輩、直ぐに旅立つのですか?」
「ああ、苦労しつつも沢山売る姿を見せつけて、就職活動を有利にしたいからな。」
「何か企みでも?」
「個人に売るだけでなく、置いて貰えそうな店を探してアポイントメントは取って有るんだ、髪飾りメーカーとも相談してあってね。
明日は三店舗をピックアップ済み、番組の宣伝をしつつ営業活動をするのさ。」
「販売の話は聞いていましたが、そこまでとは思っていませんでした。」
「七人のリポーターの中では、トップということで日程的に有利だけど、髪飾りでは顧客が限られるだろ。
明日の中継では頑張らせて貰うから宜しくな。」
「明日は、理沙先輩とでしたね。」
「ああ、理沙の担当は比較的売り易いお菓子だから少し協力して貰うが、現地で髪飾りの似合う美女を見つけて出演して頂くつもりなんだ。」
「芳樹先輩なら簡単に見つけられそうですね。
でも、全く無関係な地方都市を結び付けられるかどうかの真面目な企画なのですが。」
「はは、俺も真面目に考えてるよ、今回はささやかな企画だけど、大都市圏に対抗する地方都市連合構想は面白いと思うんだ、市民政党若葉と同じ様に、始めは地味でも少しずつ拡大出来たら良いよな。
俺は、髪飾り販売を通して、その意味を訴えて行くつもりだよ。」
「頑張って下さい、スタジオで良い結果が聞けたら嬉しいです。」
「ああ、九月一日へ向けての助走でも有るからな。
あっ、トラックが来た、じゃあ、行商の旅に出るよ、また明日な。」
「はい、お気をつけて。」

芳樹先輩を見送った後は、のんびりと三人で夕食。

「和馬、地方都市連合構想を推し進めて行くにはもっと企画が必要よね。」
「ああ、でも、それぞれの都市にとって、どれだけのメリットを生み出せるのか考えると難しいよな。」
「芳樹先輩担当の髪飾り製造元は、社員に優しい会社だそうです。
売り上げが伸びれば、職場環境の良い会社で働く人を少し増やす事が出来る。
そんな地道な取り組みを市民政党若葉として応援。
ささやか過ぎる取り組みでも積み重ねることが大切だと思います。」
「始めから大きな成功を目指すのでなく、まずは地道にということか…、小さな企画なら番組でも、今までは地方の話題が少なかったが、今回の旅行を通して地方局と俺達の繋がりを強くして…。
梅子姉さんはマンネリを嫌ってるよな。」
「ふと気づいたら、地方の経済にささやかながらも貢献してるって企画を見つければ良いのですね。」
「芳樹先輩や理沙先輩が担当してる以外の商材を見つけられるかしら?」
「そこは、愛華のコミュニケーション能力に期待したい、まずは土産物売り場でリサーチかな。」

夕食後、軽い気持ちで立ち寄った土産物売り場、そこで自分達の知名度が上がってることを実感させられる。
その対応に苦慮はしたが、まあ、テレビで見るより良い男だと言われて悪い気はしない。
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