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情報番組-10 [シトワイヤン-06]

二週目の月曜日、番組は殺人事件のニュースから始まった。
アシスタント役の女子アナが一通りの事実関係をボードを使って伝えた後…。

「和馬はこの事件、どう思う?」
「私達が知り得るのは事件のごく一部、何も知らない第三者として考えるのは、まず、犯人が犯行に至るまでの人生をどう歩んで来たかです。
勿論詳しくは知る術は有りませんが、少しでも何かが見えて来たら、今後同様の犯罪を減らす切っ掛けを探れるかも知れません。
まずは、うちのスタッフに分析チームを結成出来ないか打診したところです。」
「あなたのスタッフということは大学生?」
「はい、チームがどの様な形になるかは丸投げなので、どうなるかは不明です、上手く動き始めることに成功したらこの番組でも報告させて頂きますね。」
「えっと、どういう考えで?」
「そうですね、梅子姉さんは、番組で事件事故に対して言いたいことを言っていても、そこで終わってしまうと思いませんか?」
「そうね、ニュースは多いし。」
「ですが、犯人のこれまでの人生から学び、今後の社会を修正して行く事で犯罪を減らせる可能性は有ると思うのです。
法改正が必要ならその手続きを、人の意識改革が必要ならその手段を考える、市民政党若葉の学生スタッフは自分の考えに賛成してくれました。」
「随分大きく出たわね。」
「単に大きな目標を提示させて頂いただけで、簡単に結果が出る事ではないと認識しています。」
「犯人に対する取り組みは何となく分かったけど、可愛そうなのは被害者よね。」
「はい、そうですが、被害者側の事情も自分達には分かりません。
ですから、犯人の事も被害者の方の事も何も知らない自分がコメントするべきではないと思います。
ただ問題視したいのは、今までも犯人と全く無関係な個人や企業が、名前が似ているというだけで抗議の電話を受けたり、風評被害に有ったりしています。
事件と無関係な人が自身の欲求不満のはけ口として、軽い気持ちで抗議の電話というのはやめて欲しいです。
まあ、そういう人を生み出している社会環境にも問題が有るのでしょうが。
また、被害者の家族が心無い、取材という名の暴力、に苦しめられて来たのも事実、マスコミを名乗る人達の歪にも目を向けたいですね。」
「ふふ、和馬、週の始めから語ったわね。」
「これで、自分のことを生意気な奴だと、世間の方々が盛り上がって下さったら楽しいのですが、梅子姉さん、世の中それほど甘くはないですか?」
「そうね、マスコミ批判に対して局の上層部から圧力が掛かったら、一緒にこの番組卒業しましょう。」
「え~、自分は入学したばかりですよ。」
「その結果を視聴者の方々がどう判断して下さるかだわ、大丈夫、そうなってもネットが有るわ。
貴方のことだから、チームの分析結果はネットでも発表して行くのでしょ?」
「はい、勿論です。」

これは今後に向けた布石と考えてのこと。
番組で殺人事件を扱う度に、分析チームの分析結果を紹介したり、そこから市民政党若葉がどう動こうとしているかなどを話させて頂くつもり、他の情報番組と一線を画すことを目論んでいる。」
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