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情報番組-03 [シトワイヤン-06]

翌日の生放送は、新入学の時期という事も有り、VTRのテーマは小学生の重過ぎるランドセルについて、中学生の事情も取り上げた。

「小学一年生、希望にあふれて背負うランドセルが重過ぎるとわね、私にもそんな時代が有った筈なのだけど忘却とは忘れ去ること、で、清香さんは覚えてるでしょ。」
「はい、小学生の間は重いことを受け入れていました、そうですね、もう少し軽かったら、もう少し背が伸びてたかも知れません、VTRでは私の頃より更に重くなってる印象でしたが、和馬は楽してたのですよね?」
「梅子姉さん、自分の場合、楽したいからという感じではなかったのですが、うちは恵まれた環境でコピー機という物が存在していまして、親は教科書のコピーを許してくれたのです。
コピーには自由に書き込め学習効率が良かったので、一部の教科は教科書ではなく必要な部分のコピーを持って行ってました。」
「先生の反応はどうだったの?」
「コピーでは駄目だと言われましたが、それを論理的に説明出来る教師では有りませんでした。
こう見えて真面目で優秀な小学生だったのですよ。」
「嫌な小学生だったのね。」
「どういたしまして、でも、この問題は前から有ったと思うのです、それを問題視するだけのまともな大人が教育の現場で力を持っていないという所に大きな問題が有ると思います。」
「そうね、中学でもコピーを使ってたの?」
「はい、中学からは学習効率重視の私立でしたので何の問題も有りませんでした。
皆が真似し始めて、教科によっては誰も教科書を持って来ないなんてことも有ったぐらいです。」
「そっか、Vで触れてた様な耐える中学生ではなかったんだ。」
「あんな重荷に耐える真面目で可愛い子ども達を見てると、なあ清香、何とかならないのか?」
「学校の問題は多いです、デジタル教材という選択肢も有りますが普及には時間が掛かりそうです。
梅子姉さん、この問題を継続的に番組で取り上げて頂くことは可能でしょうか?」
「継続的か、何か思うところが有るの?」
「はい、学校の闇と言える、教師の労働環境問題、部活問題などが僅かながらも改善の方向に向かって動き始めたのは、問題を明らかにし訴えて下さる方がいらしたからです。
一時の話題として済ませてしまっては社会を動かせませんが、継続的に現状を検証して行けば学校の抱える闇の部分を解明し、馬鹿げたことをもっと正して行けると思うのです。」
「そうね、番組の有り方として正しい方向だと思う、清香さんも手伝ってくれるわね。」
「はい。」
「和馬たちを迎えてね、単に日々の出来事を取り上げてああだこうだと話すだけでは駄目だと思ってるのよ。」
「? 和馬、何か言いたそうね?」
「いや~、さすが梅子姉さんだと思いまして、我々が国際情勢について語っても何も変わりませんが、学校の問題でしたら、梅子姉さんの力で人を動かせます。」
「私にそんな力は有りませんよ。」
「視聴者の方に考えて頂くことは大きいと思います、老人福祉にばかり目が行っていた時代が有ったそうですが、今は少子化問題も有って子ども達へ視点が移っています。
梅子姉さんなら、馬鹿げた校則とかを皆で笑いものにするだけでなく、良い方向に変えて行くだけのパワーが有ると思うのです。」
「和馬は生意気だわ、でも、それが市民政党という発想に元づいた考えなのね。」
「はい、自分の子が小学生になって、重いランドセル背負って修業なんて…、まあ体格に応じた重さで鍛えるというのなら納得しますが。」
「そうでない現状は何とかしたいわね。」

継続的に取り上げて行くテーマは幾つか選んで有る。
VTRの制作に関しては、株式会社和馬が台本などの準備やリポーターを用意する契約を局と結んだ。
リアル学生部からスタッフになってくれた人達は、すでに局のスタッフからレクチャーを受けていて、この日のVTRには愛華が登場していた。
清香から俺に話を振ったりしながら梅子姉さんと話す三人だけで話を進めるスタイルは邪道かもと思い相談したのだが、許されただけでなく、積極的に使って行こうとなった。
梅子姉さんだけでなくディレクター達スタッフも、番組を今までに無かったものにして行きたいという思いが強いみたいだ。
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