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パリ-11 [シトワイヤン-26]

舞姫さまの祝福、その感じ方は人それぞれだが、舞姫さまは我らと共に有り暖かく見守っていると、言葉でなく不思議な力で包み込むように感じさせてくれる。
報道で数多く取り上げられ、さらに多くの人が集まることとなったが、舞姫さまに関するルールは自然と出来上がり混乱は無かった。
祝福の力は広範囲に及ぶ。
人々は一旦舞姫さまの力を感じると舞姫さまとの距離は関係ない事に気付き、穏やかな気持ちで語り合ったり、思索にふけったり。
今まで曖昧に神と呼ばれていた存在が、そこに実在することを感じられたらそれで充分なのだ。
一目その姿をと思い移動ルートの沿道に集まる人達も、祝福の力の影響が有るのだろうか、落ち着いて譲り合っている。
舞姫さまの観光を妨げる者は無く、最初に立てたスケジュールに戻すまで何日も掛からなかった。
そして、パリ。

「写真や映像でしか見た事のなかった凱旋門、やはり実物は重みが違うわね。」
「映像にはこんな群衆映ってなかったがな、しかも各々が自分が信仰している宗教の作法に則り姫さまに向かって、祈りを捧げてるから奇妙な光景だよ。
教義に従うのなら、舞姫さま信仰禁止の宗教宗派が多いと思うのだけどね。」
「そして舞姫さまへの作法が分からないから、何時もの祈りということなのでしょう。」
「ここまで、宗教関係者は思っていたより静かですね、こちらが布教活動をしてないからでしょうか。」
「テレビ番組では自分達の都合に合わせていい加減なことを言ってるみたいだよ。
舞姫さまは簡単に否定できる存在でないから、自分達の教えに取り込もうとしていたり。
ただ、実際に舞姫さまの祝福を体験すると違って来るそうだ。
この瞬間にも宗教を見つめ直している人が五万といるのだろうな。」
「舞を、日本伝統のものから発展させた創作舞踊とし、宗教性を前面に出さなかったのは正解だったと思います。
もし、神道を強調していたら、舞を受け止めるのに無意味な制約となったのでは有りませんか。」
「だろうな、そして、改めて姫さまの奇跡に触れ、自身の信仰を考える。」
「新興宗教は分かりませんが、多くの宗教は創作かも知れない大昔の出来事や教えを元に語り継がれて来たと思うのです。
当然、現代の状況とは合わない部分も多くなって、歪が大きくなっているとは思いませんか?」
「宗教が理由で戦争が起きていたり、別の利害も絡み…、人間社会は利己的だからな。」
「自己保存本能では有るのですよね、自分達の集団を守るという。」
「やはり、争いはなくならないという事でしょうか。」
「人と集団の関係を考えたら絶対無くならないと思う、自分が帰属していると感じられる社会集団は複数有るだろうが、その最大規模は基本的に国家であって世界ではないだろ。」
「そして、大小様々な社会集団間の前に個人対個人の諍いが有りますものね。」
「それらの対立を…。
様々な宗教、宗派の人達が、舞姫さまの到着に合わせて集まり、それぞれの作法に従って祈りを捧げている、この光景…。
舞姫さま、世界は一つになれるのでしょうか?」
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