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パリ-06 [シトワイヤン-25]

ヨーロッパ旅行、最初の訪問国はイタリア。
チャーター機を降りた後は一般客と顔を合わせることなく休息の後、車へ。
万里は智里と、私達はすぐ後ろの車で移動。
警備車両に守られた我々の車列は沿道に集まった観衆に配慮してスピードは上げないが、信号機で止まる事はない、本当のVIP扱いだ。
私から見える沿道の人達は様々だが、思いっ切りの笑顔で手を振る人と胸の前で十字を切り祈る人が多い。
彼らは、僅かな時間ながらも舞姫さまを見られて満足してる、というのが私達の得た印象。
一旦ホテルに落ち着いて。

「まるでパレードみたいでしたね。」
「あの人達の前を猛スピードで走り抜けたら暴動になり兼ねませんよ。」
「姫さまは如何でした?」
「ゆっくり走って下さったので、沿道の皆さんが喜んで下さってるのが伝わって来て楽しかったです。」
「疲れてない?」
「大丈夫ですよ、大勢の力に少し戸惑っただけです。」
「今夜の宴会も問題なさそうか?」
「和馬さん、訳はせめて晩餐会ぐらいにして下さいよ、偉い方もお見えになるそうですから。」
「こういう時に特権を利用する訳だな、ゆっくりだったとはいえ、車で通り過ぎる僅かな時間で満足せねばならない一般庶民を尻目に…、あっ、愛華、どうかしたのか?」
「沿道で取材してたチームから報告が入ったの…。」
「早いね、急がなくても良いのに、それで?」
「舞姫さまが奇跡を起こされたとか。」
「キャッシーはカトリック総本山の足元で多くの人を集める、それが奇跡の第一歩だと話していましたましが、その通りになりましたね。」
「いえ、そんな話ではなくて…、速報みたいなものだから詳細は分からないのだけど、車椅子で見学してた子が急に元気になったとか、どんな病状だったのかはこれから調べると。
ただ、似たような話が複数耳に入り、想定外のことで取材しきれそうにないと指示を仰いで来たそうなの。」
「う~ん、もし本当の事なら地元のメディアが調べるだろう、直接追わなくても、それを確認すれば良いかな。」
「そうね、その様に連絡しておいて貰うわ。」
「奇跡について、万里に心当たりは有る?」
「元気のない人って、あまり見たことがなくて新鮮だったから、元気になってねって目で伝えてみたの、その中に車椅子の子もいたわね。」
「意識的に?」
「にこにこしてるのが役目で暇だったからね、凄く大勢から頂いたプラスのパワーを数人に送ってみたって感じかな。」
「そんなパワーの話、今まで万里から聞いたことがないのだけど。」
「お姉ちゃん、今回程の人数は初めてでしょ、しかも皆さんは私を見る為に集まって下さった方々、エントロピーを無駄にしないというイメージが浮かんで試してみたの。」
「姫さまの力には、熱力学が関係してるということですか?」
「いえ、イメージ的なもので、熱力学に置き換えて考えると思考を整理し易いかも、というレベルです。」
「試してみたら奇跡が起きたという事なのかな?」
「バチカンでは奇跡…、そもそも奇跡の定義って曖昧だと思いませんか?」
「確かにそうだが、本当に、病弱な子が舞姫さまと目を合わせただけで元気になったとしたら、間違いなく奇跡だと思うぞ。」
「和馬、それを宗教関係者達が簡単に認めると思う?
彼らは権威の象徴みたいなものでしょ。」
「ふふ、単なる偶然ですよ、私は勝手にイメージしていただけで、たまたま私と目が合ったら気持ちが高ぶってとか、そんなことでしょう、私って罪な女ですね。」
「その可能性は否定出来ないな、取り敢えず何か聞かれたら、罪な女説を我々の公式としておこう。
着いて早々、大量の信者を作り、宗教関係者を敵にするのは極力避けるべきだろう。」
「でも、結果は見えてますね、DVDだけで今日の人数が集まったという事実だけでも、キャッシーが予定してたという奇跡です。
車椅子の方の話は、確実に尾ひれがついて広まるでしょう。」
「清香もそう思うのね、それに対して私達は冷静な対応を心掛けるくらいしか出来ることはないわ。
まずは今夜の晩餐会がどうなるか、万里ちゃん、舞姫さま罪な女説で通すなら私達もそれに合わせるけど。」
「お願いします、それなら、舞姫お子ちゃま説は出て来ないでしょう。」
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