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パリ-03 [シトワイヤン-25]

万里は会う度に綺麗になったと思わせてくれる。
今回は少し間が開いたので尚更だ、それでも普通の十代…。

「舞姫さま、お久しぶりです。」
「あ~、随分日焼けして、和馬さん、遊び回ってるんだ。」
「はは、遊びを兼ねた海外取材ですよ、はい、お土産。」
お土産はシルクのスカーフ。
「へ~、これは舞の時に小道具として使えるわね、清香さんが選んで下さったんだ。」
「えっ、分かるの?」
「分かりますよ、ほら香りがするでしょ、和馬さんじゃこれを選べないし。」
「えっ、そうかな…。」
「和馬さんは大切な人の香りも嗅ぎ分けられないの?」
「生憎、イヌ科イヌ属の生まれではないのでね。」
「はい、お手。」
「わん。」
「よろしい、ご褒美の飲み物は彼女に注文して下さいね。」

コーヒーを飲みながら。
「姫さまは今も盲学校に訪問されているのですか?」
「ええ、始めは視線を感じない環境が面白かったのだけど、発見が多くて楽しいのです。」
「どんな発見を?」
「歌ってる時と舞ってる時では私のパワーが全然違うと言われましてね。
舞っている時の感覚を入れて歌ってみたら喜んで貰えたのだけど、調子に乗って歌ってたら疲れてしまって、今はその辺りのバランスを研究中なんです。」
「舞も疲れすぎ無い様、コントロール出来ると良いね。」
「それは駄目、舞で手抜きは出来ません、長時間でなくても真剣に舞えば満足して頂けるのですよ。
でも、頑張って歌っても盲学校の生徒は見えない舞の方が沢山の力を感じると言うの、私って音痴なのかな。」
「それはないだろう、DVDの売れ行きは異常だがCDもしっかり売れてる、お小遣いの使い道に困っているのだろ?」
「困ってないですよ、会社を買収して再建するのに投資してますので。
後継者を見つけられないが従業員の為にも会社を存続させたい、といった社長からの問い合わせも結構ありましてね。」
「目指せ大企業なのか?」
「軸足を地方に置いた、中小企業を束ねる持ち株会社です。
思い切った設備投資をすれば、その見返りが大きかったのに踏み込めなかった、そんな企業が中心になります。」
「成程、舞姫さまの会社なら安心だな。」
「ふふ、自分がかなりインチキな存在だという自覚は有るのですよ。」
「インチキ?」
「株の取引でも何となく買った銘柄が大きく伸びたり、データ上は問題が無いのに手放したくなって全部売却したらすぐに不祥事発覚みたいな感じで、私に憑り付く神さまはお金が好きみたいね。」
「そうか、憑りつかれてたのか、自覚は有るの?」
「全然有りません。」
「では自分が神だという自覚は?」
「そんな自覚有る訳ないです、そもそも神なんて人間がでっち上げた存在ですよね。」
「う~ん…。」
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