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進路-10 [シトワイヤン-23]

高校中退と言っても事情は様々、不登校も同様だ。
怪我や余程の病的な要因が絡まないので有れば、周りが環境を整える事で社会の一員として自信を持って生活出来るようになる、そう考えての取り組みにはチーム再起動として現在五人が参加している。
中学を卒業したばかりの万里も、サポート役として活動に携わっていて…。

「万里、今日はどうだった?」
「機械化の進んだ畑を見学させて貰ったのだけど、工場のシステムを応用すれば効率が良くなり人の負担が減りそうなの。
それで二つの工場を紹介させて頂いて来週見学に、物事にはついでという事が有るから、チーム再起動のメンバーで希望する人も一緒にとお願いしたわ。」
「まあ、万里が同行するので有れば断れないでしょうね。」
「うん、一つの工場は製品をうちで購入して農家にリースという形も考えていてね。」
「商売を手広くして行くの?」
「ええ、私の周りの人達に色々な仕事を経験して頂くという狙いが有ってね。
経験値を上げておけば応用が利くし、新たな取り組みはスタッフの能力を見極める材料にもなるでしょ。」
「チーム再起動メンバーを雇うという事も考えているの?」
「そうね、どこにも拾って貰えなかった人の為の職場は用意したいかな。
今の五人は親に強制されてでは無く自発的に参加してる人達だから全員最後まで面倒をみたいでしょ。
まあ、しばらくは見学や研修、実習で先の話だけど。」
「将来的には自発的でない人も受け入れて行くという案は?」
「私は反対してる、あくまでも経済活動の一部に無理を言って場を作って頂いてる訳で、自分を再起動しようという意思の無い人は迷惑でしかないと思うの。
そういう人向けには違う企画を立ち上げるべきだわ。」
「そうね、真面目な人の足を引っ張る可能性が有るものね。
他の企画と言えば、中高生向けの職場体験を広げて行くのは?」
「人数が多いと受け入れ側も大変でしょ。
まずは就職希望者と苗川企業部会のメンバーが面接する所から始めようとしてるのだけど、始めの内はこっそり募集していく事になるかも。
企業部会メンバーもイメージは出来ていても、実際に会って話してみて何が必要なのか、就職しようという人達にどんな教育、研修の機会を用意すべきか分からない部分が有るのよ。
でも、大学を卒業して教員になった人が企業活動を説明するより、遥かに効果的な場を作れると確信してるわ。」
「うん、進路指導をしている高校の先生は企業の現場を知ってる訳では無いものね。
万里は色々な会社を見学してみて何か感じるものは有った?」
「そうね、高校で工場や倉庫の仕組みを理解する時間が有って良いかも。
チーム再起動の人達は、授業で教えられてた内容より興味深くて面白い、就職したらすぐに役立ちそうだと話してたわ。」
「そっか、覚えておくわ、それでチーム再起動の皆さんとは上手くやれてるの?」
「ええ、ただね、移動中とか私を守ると称して、皆さん回りを取り囲んでくれるのだけど…。」
「万里の視界は背中なのね。」
「なんか悪いことして護送されてる気分なのよ、あ~、私は無実です、って叫んでみたいけど、変な子だと思われたくないし。」
「試しに叫んでみて、本心を話してみたらどう、もっと親しくなれるかもよ。」
「う~ん、ご飯をおごるよりハードルが高そうだけど、ねえ、年下の私からおごられるのって嫌なものかな?」
「それも、直接聞いてみたら良いんじゃない、人それぞれだから。
万里におごられたら、一生下僕となって働きます、という人、現れそうだな~。」
「ふ~ん、下僕ってどんな事してくれるの?」
「そうね…、う~ん、考えてみたら貴方の周りはすでに下僕だらけかも、最近重い物持った事有る?」
「重い物?」
「重い物という感覚すら失ってしまってると、筋力的にやばくない?」
「全然考えて無かった、筋力について調べてみるべきかな?」
「ええ、そのまま老人の様にはなりたくないでしょ、自分の健康とかにも気を付けなきゃ。」
「中学卒業で体育の授業が無くなって、喜んでいてはいけないと?」
「なんなら私が鍛えてあげようか?」
「大丈夫、自分で何とかする。」
「そんな事言わずに。」
「並外れた運動能力の持ち主で有るお姉ちゃんに鍛えられるのはちょっと危険なのよね…。」
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