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万里-03 [シトワイヤン-19]

「佐伯さん、今日はお招き頂き有難う御座います。」
「いえ、万里ちゃんにはお世話になっていますし、智里さんや万里ちゃんがどう育って来たのか、とても興味が有りましたので。」
「ですよね、父親の私が言うのもなんですがホントに良い子に育ってくれて。
うちの子達、遺伝子的には同じ筈で容姿的には普通の三姉妹なのですが、性格とか全く違うのですよ。
正義感に熱い智里、優しくて暖かい万里、なまぬるい末娘の実里という感じでしょうか。
能力的に智里も低くは無いのですが、万里は知力がずば抜けて高いだけでなく、不思議な子でも有るのですよ。」
「不思議ですか、確かに小学六年生とは思えなくて、大人が敬語で話しかける光景を何度か目にしました。
小さい頃はどんな不思議ちゃんだったのです?」
「生まれたばかりの病院では、看護師さん達が、こんなに愛らしい新生児は初めてだと口々に。
私は無事に生まれて舞上がっていましたので、そう言われてもピンと来なかったのです。
ただ、退院してからも、万里を見る人の反応が、智里の時とは大きく違いましてね。」
「どう違ったのです?」
「ずっと見ていたい人が続出しましてね、その中に智里もいたのですが。」
「乳児にして人の心を捉えていたのですか…。」
「智里が乳児だった時の写真と比べても、そんなに差はないのですよ。
でも言葉は明らかに早かったです。
初めての言葉が、ねーねかとうたんかで智里と勝負したのですが敢え無く敗北、でも万里に話しかけ、万里と話すのが楽しいのはずっと変わりません。」
「沢山話しかけたから言葉が早かったのでしょうか?」
「必ずしもそうではないみたいですが、子どもには良い刺激になると思います。
万里が生まれてから、何故か乳児に話し掛けるのが近所で流行しましてね。
それがそのまま子ども達とのコミュニケーションを深める事に繋がっているのかも知れません、科学的な根拠の有る事では有りませんが、智里の同級生より万里の同級生の方が、より地域の大人達に馴染んでいまして、『格好良く』が始まった時期とも重なりますので何とも言えませんが。」
「今度学生が聞き取り調査を行いますので担当者に伝えておきます、その辺りから鹿丘小学校の謎に迫れるかも知れません。
万里ちゃんを溺愛している智里さんの存在は如何でしたか?」
「万里を育てたのは智里だと言って良いくらい、万里と一緒でした。
万里が泣いてる理由がすぐに分かる様になるぐらい見てましたね、幼稚園での出来事を語りかけたりしながらです。
それが、小学生なると本の読み聞かせを始めまして。
小学一年生が幼児を膝に乗せてですよ。
同じ本は本人が飽きるみたいで、先生曰く図書室の本を全部読みつくすと言わんばかりのスピードで借りまくっていました。
そのお蔭で、姉妹揃って語彙が豊富になったのだと思います。」
「親だけでは限界が有りますものね。」
「ええ、万里は、お姉ちゃんの話を聞いたり、本を読み聞かせて貰うのが好きだったみたいで、飽きることなく聞いていました。
私の知らない内に智里が教えて自分でも少しずつ読める様になりました。
読む事だけでなく、智里は学校で学習したことを教えていましてね、小二になった智里の計算ミスを幼児の万里が指摘していたのには本当に驚きました。」
「天才児だったのですね。」
「天才の定義は分かりませんが、万里の能力を引き出したのは智里だと思います、幼児期の質問攻めにも智里が応えてくれてました。
親としては英才教育なんて全く考えてなかったのですよ。」
「お子さんが天才児だと気付いて、何かされたのですか?」
「はい、幼稚園に入園前…。」
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