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夏休み-08 [シトワイヤン-18]

今日は算数倶楽部の日です。

「正一君、私が参加して問題ないの?」
「うん、算数倶楽部は自由参加なんだ。
そう言えば、真紀ちゃんは、夏休みの宿題、どうなの?」
「一応前の学校で出されたのを、鹿丘の先生に見せなさいって言われてて、済ませて有るわ。
どさくさに紛れてやらない選択肢も有ったけど、大した量じゃないし先生には真面目な子だと思われといた方が良いでしょ。」
「ふ~ん、で、真紀ちゃんは真面目なの?」
「悪い子ではないかな。」
「はは、悪い子なんていないよ。」
「そうなの?」
「例えば低学年の子が問題を起こしたとするでしょ、鹿丘小の高学年は、その子に悪い子というレッテルを貼るのではなく、なぜ問題を起こしたかを考えるんだ。」
「うわっ、大人の対応なのね。」
「大人より僕らの方がその子の事を知ってたりするから、大人が気付いていない、その子なりの理由が分かることも有るのさ。」
「頭ごなしに叱るより格好良い、ということなのね。」
「うん、だから親の言う事を聞けない子でも、僕らの言う事は素直に聞けたりするんだ。」
「そうか、みんな良い子ばかりだと思っていたけど、正一君達がそうしてたのね。
あっ、みんな来てる、今日は何時からだっけ?」
「時間は決まってないんだ、もう始めている子がいるし、午後からの子もいるんじゃないのかな。」
「ねえ、夏休みに自由参加で算数の学習と言っても、本当は親に強制されたりしてるのでしょ?」
「どうかな、五年生は万里ちゃんと会えるから嬉しいし、今日の参加者は算数の時間に教える側の人、格好良い人ばかりだからね。」
「そっか。」

僕の班は二人来ていたので、真紀ちゃんを簡単に紹介し。
「どう、予習は進んだ?」
「私は勢い余って、六年生範囲まで済ませてしまったわ。」
「僕もだよ、正一が話してた通り割合が少し分かりにくかったけどね。
ついでに、兄ちゃんの教科書借りてちょっとだけ中学の数学を見てみようと思ったんだけど、兄ちゃん教えるの上手いからついつい進んじゃって。」
「流石だな。」
「ねえ、この班は一番優秀な人の班なの?」
「うん、まあ算数は得意だね。」
「私、それほど成績悪くないけど、そこまで予習する気はなかったな。」
「先輩にね、能力の高い人にとって学校のカリュキュラムは無意味だと考える人がいたんだ。
で、小中学校で試してみたら、算数は先まで進むと更に理解が深まるという結論になってね。
中学の数学倶楽部では高校生内容まで進んでる人が何人もいるそうだよ。」
「へ~、正一君は?」
「まだ中一レベルの途中。」
「それって、まだ、なの?」
「上には上がいるからね。」
「う~ん、算数って簡単に百点取れるから満足してたのだけど。」
「それだと、自分の力を伸ばすチャンスを逃すことにならないかな。
算数を教えていて気付くのは個人差なんだ、簡単に理解出来る子と出来ない子の差は大きい。
それなのに、同じ教科書を使って同じカリキュラムだから、色々無駄が有ったんだ。
鹿丘小では教え合う事によって、その無駄を減らしているのさ。」
「でも、それだと教えている人にとって無駄な時間にはならないの?」
「教える、という作業は凄く頭を使う作業でね、算数の問題を解く以上に色々な能力が身に付くと実感してるよ。」
「そうなんだ、まずは予習をしないとだめなのね。」
「良かったら、二学期の学習内容を説明しようか、僕らも実際に教えてみた方が理解が深まるし、教える時のポイントが掴めるからさ。」
「お願いします。」
真紀ちゃんは理解が早くて…。
「正一君に教えて貰うの、なんか楽しいわ、先生より分かり易いのは何故?」
「教え方はみんなで研究してるんだ、六年生と一緒にね。」

そこへ、その六年生の中心、万里ちゃんが来ました。
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