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夏休み-07 [シトワイヤン-18]

山上さんが帰られ、寝る子がテントに入った所へ、中学生の恵美さんが来てくれました。

「正一、山上さんの話はどうだった?」
「うん、面白かったよ、絶対王政とか市民革命とか。」
「そっか、山上さん、歴史得意だからね、中学の先生より分かり易いのよ。
で、その子が正一の新しい彼女なの?」
「えっ、そんなんじゃないよ。」
「武田君、違うの? 
私のことは…。」
「あっ、泣かせた。」
「ま、待ってよ…。」
「な~んてね、彼氏彼女って良く分からないけど、武田君とはうんと仲良くなりたいかな。」
「清水さん…。」
「ふふ、面白い子ね、それならまずは武田君ではなく正一って呼ばなきゃ。
ここは鈴木さんが多いから、下の名で呼び合うのが普通なの、ちなみに私は鈴木恵美、中二よ。」
「はい、清水真紀、五年生です、よろしくお願いします。」
「ねえ、都会では普通にアイドルとかに会えるものなの?」
「イベントとかライブに行けば、でも、苗川のアイドルほどのオーラは有りませんよ。」
「やはりそうなんだ、万里ちゃんって不思議なのよね、見つけるとドキドキ、それから心がほんわかして、でも舞の時は…、ねえ正一、知ってた?
万里ちゃんの舞姿を映像作品やポスターにする話が出てるって。」
「えっ、知らなかった。」

そんな話をしているところへ。
「そろそろここは片づける、眠い奴は寝て良し、十分で済ませるぞ。」
その声と同時に中学生達が手際よく片付け始め、ほとんど手伝えない内に終わって…。
「じゃあ行こうか。」
と中学生のリーダー。
「武田君、どこへ行くの?」
「清水さんは眠くないんだね?」
「うん、朝はゆっくりで良いのでしょ?」
「じゃあ、リーダーに付いて行けば、すぐだからね。」
少し上ると開けたところに出る。
「あっ、流れ星!」
「良かった、清水さんが見つけてくれて。」
「えっ?」
「流星群の時期なんだけど、今回は条件が悪いそうでね。」
「あっ、また流れた!」
「恵美ちゃん、やっぱり少な目?」
「そうね、月が明るいから星があまり見えてないでしょ。」
「えっ、そうなのですか、沢山の星が見えてますよ。」
「そっか、まだ真紀ちゃんは苗川の星をまともに見てないんだ。
新月だと月の光がないから星が沢山見られるの、流星群が来てる時が、晴天で新月だったら参加者はうんと多かったのよ。」
「でも、流れ星が見られて感動です、私、本物の流れ星見たの初めてなんです。」
そこへ…。
「When you wish upon a star ♪
Make no difference who you are ♪
Anything your heart desires ♪
Will come to you ♪」
綺麗な歌声が響き渡る。

「ふふ、真紀ちゃん、今度はウソ泣きではなさそうね。」
「はい…、絶対忘れられない夏休みになりました、あの歌声は?」
「四月に転校して来た咲子、歌はみんなのリクエストに応えてくれたの、夜の山は響き方が全然違うでしょ。」
「はい、こんな幻想的な歌声を聞いたのは初めてです。」
「私もよ、咲子の歌をここで聴いてみたくて、お願いして正解だったわ。」

咲子さんの歌声はとても綺麗で感動しました。
暗くて良く分かりませんでしたが、目に涙を浮かべている人は少なくなかったみたいです。
その後、清水さんは中学生達に紹介され、僕は咲子さんに紹介して貰いました。
「うふっ、こんな可愛い仲間もいるのね。」
と、つぶやいて、僕の頭をなでてくれた咲子さんが、涙声になってた理由は後で恵美さんに教えて貰いました。
僕たちの町が迎えた新しい仲間の中にはつらい思いをして来た人がいて、これからも、そんな仲間が増えて行くかも知れないという話と一緒に。
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