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或る日の-07 [シトワイヤン-15]

或る日の夜。

「和馬、執筆中の本のことだけど。」
「何か問題でも?」
「ちょっと概要を聞いてくれる?」
「ああ。」
「一つのテーマは人間としての価値観かな、極論を言えば誰からも嫌われている大金持ちと誰からも愛される貧乏人。」
「人から嫌われても金儲けは出来るが、誰からも愛されていて貧乏というのは成立するのか?」
「やはりリアリティーに欠けるかしら。」
「色々並べてみたらどうかな。
高い学力を持つが利己的な人と学力は低くても誰にでも優しい人、とか。」
「優しさや愛されるというフレーズはやはり弱いのかな…。」
「俺達の党が仲間にしたいのは、社会とどう係わっている人なのか、という実例を挙げた方が早いのかも。」
「日本語版だけなら問題はないのだけど、英語版だと、日本人との価値観の相違が大きい気がしてさ。」
「それは有るだろうな、英語版への翻訳は多国籍の人に助力を求め、日本人の価値観を研究して貰いながらにした方が良いのかも。」
「地球市民党を通して協力を要請すれば良いのかしら。」
「試してみるのは有りだね、他の内容は固まったのか?」
「ええ、教育を、しつけや徳育の観点から、学力教育偏重にならず人との繋がりを考える人間教育。
社会教育を通して皆が安心して生活出来る社会の一員に、社会が私達の生活を変えてくれると考えるのではなく、社会を構成する一人一人によってより良い社会が成立するということを分かり易い事例を通して訴えて行こうかと。」
「そうだな、自分さえ良ければ良いと考える人だけの社会は成立出来ない、仕事としてで有っても集団の為に働く人が必要だからな。
あっ、本間さんの名前は当然出すのだろ、了解はして頂いたのか?」
「勿論よ、概要を話したら、印税に期待してるって、民間で弱者救済を進めてくれると市長として助かるとのこと、私達の福祉活動への対価は感謝状という紙切れ一枚で許して欲しいと言われたわ。」
「それも必要ないが、今日、乾社長と連絡を取ったらね、そういう分野でも効率良く費用対効果を最大限にする方法を検討しているそうだよ。
子どもが描いた絵でも何でも、売れる物は売って行く、作品が売れることによって作者が自信を持ってくれたら、経済的にも心理的もプラスになるそうでね。」
「さすが乾社長、彼が利己主義の守銭奴でなくて本当に良かったと思うわ。」
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