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拡大-10 [シトワイヤン-13]

「愛華、CitoyenのTシャツ、凄い売り上げだね。」
「ええ、豊富なデザインと、今までCitoyenの商品を持ってなかった人がTシャツならばと買って下さってることも大きいみたい、党員数の倍を超えたのは参院選の影響が有るかもだけど。
党支部からはTシャツの利益だけで参議院選挙の費用を充分賄えるという話が来てるのよ、候補者関連は県連が取り仕切っているという事情は有るのだろうけどね。
参院選で皆さんが着て下さればCitoyenの宣伝にもなりそうだわ。
ねえ和馬、微妙な衆議院選挙の方はどう?」
「衆参同日選挙の可能性が高まったみたいで、何とか候補者を揃える事は出来たと聞いてる。
その場合、学生の応援を要請したいという声が上がっているが試験期間と重なるだろ、本部は大変だよ。」
「可能性が高まったとの情報源が与党から寝返った人って本当かしらね。
しかも寝返った中には党のスタッフや議員秘書もいるという噂でしょ、パソコンをまともに使えない議員の代わりに情報収集、その過程で市民政党に党員登録した人達が、市民政党のレベルの高さを知り政権交代すべきだと感じて同日選を進めてるとか、もっともらしいけど怪しげな話、でも完全には否定出来ないのよね。」
「うん、三流週刊誌の作り話に過ぎないという話も有って、党本部として公開できる情報はないそうだ。
ただ、解散総選挙で市民政党若葉の出鼻を挫くという方向性になってるのは本当みたい、真面目な党員はあちこちにいる訳でね、何時発表が有っておかしくないそうだよ。」
「選挙、勝てるかしら?」
「勝てると信じたいね、市民政党若葉私設応援団が盛り上がり始めているだろ、投票日前日をピークに持って行ければ勝てそうな気がする、なんせ凄い人達が団員に名乗りを上げて下さってるからな。」
「そうね、無党派層はそれで取り込めるとして、後は与党支持者をどれだけ味方に出来るかと言った所かしら。」
「う~んそうだな、組織票が気にはなるが…。」

そこへ、清香が入って来て…。
「衆議院の解散が発表され、衆参同日選挙が確定しました。」
「いよいよか。」
「党首の記者会見は本日二十時からで調整に入ったところです。」
「和馬、顔を出すの?」
「夜なら特別な予定はないか、マネージャー、党本部に連絡して我々が出席するかどうかはお任せすると伝えてくれますか。」
「分かりました、出席の場合は夕食の店を押さえておきましょうか?」
「愛華、気分は?」
「中華でどう、清香?」
「構いませんが、控えめな食事にして下さい。」
「承知致しました、その様に手配しておきます。」
「嬉しそうだね。」
「はい、いよいよじゃないですか、市民政党若葉が政権を握る、国会議員が十二人しかいない政党がいきなりですよ。」
「はは、選挙はそんなに甘くないです。」
「うちの両親は私が市民政党の話をしても全然乗って来なかったのに、市民政党若葉私設応援団に好きな歌手やタレントが参加し始めたら、掌を返した様に市民政党のファンに、Citoyenブランドで身を固め、父は愛華さん派、母は清香さん派なのですよ。
変わり身の早さに驚くばかりですが、候補者の事を詳しく知る事の無い多くの有権者は似た様なものではないでしょうか。」
「そうか、今回の選挙、争点は多くない、イメージ重視にならざるを得ないのかもな。
愛華、今夜出席することになったら衣装はどうする?」
「清香、あれの出番ね。」
「ええ。」
「用意してあるのか?」
「党首が大きな決意表明をする、その場に相応しい私達の衣装を考えていたのよ。」
「へ~。」
「弓道などの道着をベースに日本的な恰好良さをアピールしてみるわ、和馬たちのは適当に指示しておくわね。」
「適当か…。」
「党首の衣装に合わせてね、すでにスタッフが動いてると思うわよ、想定内の出来事なんだから。」

そうだ、愛華の言う通りここまでは想定内だ。
そして、市民政党若葉が政権政党になるという事も俺達は想定していた筈だ。
単に党員が多いだけの政党では無いと思いつつ緊張感が走る。
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