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村長-02 [シトワイヤン-03]

結局、俺達はゲームの中でも大学一年生という設定にした。
愛華は明るい女子大生、康太は女泣かせの大学生、そして俺は勇者見習いにさせられ、俺達は村立大学と市民政党若葉に所属する一つのパーティーとなった。

「事務所は家賃が高過ぎて借りられそうにないわ、政党事務所ぐらい持ちたいのに。
何もしなくても生活費として所持金が減って行くのだから、仕事をしないといけないのね。」
「そうですね、職業一覧から…、大学生が出来るバイト探し、これなら経営者という設定にしておいた方が良かったです。」
「いや、経営者は経営者なりに困難なイベントが発生するそうだよ、バイトの場合は時間配分の中に仕事時間を入れるだけで給料が貰えるから楽なんだ。」
「バイト先の情報を知ることも出来るのね、私はパン屋さんにしようかな。」
「リアルなパン屋さんは結構大変だと聞いたことが有る、その辺りもデータとして見られるのかな。」
「データは私達で共有出来るわ、どこまでリアルに寄せてるのか研究しましょ。」
「村立大学の講義を受ける事も出来るみたいだな、学費は受けた分だけだから良心的かも、このプロジェクトについての初級講義が無料なのは当然だが。」
「大学自体は誰でも講義を受けられるのですね、大学生を選択した意味が感じられません。」
「退学という選択肢も有るわね、でも、人間関係を構築して行く過程では都合が良いんじゃない、少なくとも経験豊かな大人と扱われないだけでも。」
「だね、でも村立大学のコンセプトは面白いと思わないか、開かれた大学、リアルな大学の有り方として教育システムとか…。」

始めの内はゲームの概要を探るという感じだったが、制作スタッフが何を考えてるのかが見えて来ると俺達にとって面白いゲームだと思える様になった、村立大学の講義を受けて、そのまま学習会を開くことも有る。
ゲーム自体は運営サイドが試行錯誤をしていることも有り、ゆっくりと進めているのだが、清香のモニター画面をたまたま見てショックを受けた。

「え~、俺の好感度が十って低過ぎだろ、俺は三人とも好感度Maxなのに…。」
ゲーム上、自分が感じてる好感度は相手に分からないシステムなのだが、リアルで友人だと分かってしう。
「和馬は好感度をどこまで上げる事が出来るのかしら。」
「さすが冷徹な女子大生ね、私は初期設定、五十のままだけど。」
「う~ん、どうすれば良いのか分からない…。」
「和馬、簡単なことだよ、愛華、今度パフェを奢るから、俺の好感度八十にしてくれない?」
「うん、じゃあ康太の好感度は八十に変更ね。」
「あらっ、甘いものを控えめにするという決意はどうされたのかしら、それを知っててパフェを奢るという康太の好感度は八十から七十五に変更します。」
「え~、康太は八十だったんだ、好感度十の俺は…、清香お嬢さま、何か悪い事をしたのでしょうか。」
「ゲームの中で始めから好感度が高いというのは不自然です。」
「はあ。」
「この場合、康太に悪意は無かったとはいえ、私に対する気遣いが無いという事で、好感度を下げれば良いのよね。」
「でも、パフェは康太に奢らせるのだろ?」
「勿論。」
「でも、実際の好感度はこんなに簡単ではないよな、良く知らない人だと外見だけとか、僅かな会話だけで判断してると思う。」
「付き合いが長かったとしても、好きな人には悪い所を隠そうとしてるかも知れないわね、それでも好感度なら問題なのかな、ゲームでの好感度はあくまで一個人が一個人に対して感じている…、ねえ、和馬はリアルでも、私達のこと好感度Maxなの?」
「はい、愛華お嬢さま。」
「でも、そろそろ私達の欠点にも気付いてるのでは有りませんか?」
「清香お嬢さまが何を欠点と思われておられるのか分かりませんが、好感度はずっとMaxのままです。」
「そう言われると悪い気はしません、和馬の好感度は十一に上げます。」
「そっか、自分に好意を抱いてくれてる人の好感度は上がるわね、じゃあ私も五十一にするね。」
「有難う御座います、好感度百を目指して精進させて頂きます。」

冗談っぽく話しはしたが、俺の本心だ。
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