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黒猫組-07 [化け猫亭-20]

「なあ、過疎地で難民を受け入れるのはどうかな?」
「それは難しいと思います、日本は難民の受け入れに消極的ですし、飛行機に乗って日本まで来る様な人達は過疎地での生活を望まないと思います。」
「言われてみればそうだ、過疎地に人を呼び込むのは難しそうだが…、本間くんは他にも策は有るの?」
「はい、ネット環境さえ整っていればどこにいても出来る仕事が有ります。
田舎暮らしを体験して貰う人達は、現地でも今の仕事を継続して貰います、午前中は畑仕事、午後はパソコンとにらめっこみたいな。
また、一か所に留まる必要は無いと考えていまして、時には観光地に宿泊しながら、時には過疎地の仕事を手伝いながら、気に入った土地に長期滞在や定住しても良いのです。」
「そういう働き方が可能な時代になったという事か…。」
「満員電車の現状…、毎日他人と体を密着させての通勤通学なんて自分には考えられません。
過疎地でのゆったりした生活を考える人が増えてもおかしくないと思います。」
「今までは仕事の場に束縛されていたのが、緩くなって来てるのだね。」
「ええ、しばらくは試行錯誤になりますが…、何時でも貧困に喘ぐシングルマザーや行き場の無い若者を保護出来る様にと、各地の拠点では住宅の確保を進めています、しかしそれには空室を用意しておく必要が有り効率的では有りません。
そこで需要のない間だけその住居を利用して、知らない土地で暮らす事を体験して貰う取り組みも考えています。」
「独身だったり、子どもが小学校に上がる前なら有りだね、何時でも転居出来るというのが条件か…。」
「猫桜会全体なら希望者はそれなりにいそうだ、夏は北海道、冬は和歌山で暮らすのも悪くないかな。」
「はは、軟弱者だな、冬の北海道を体験してみても良いのではないか。」
「どんな形で有れ過疎地を体験して欲しいので、都会の映像を見せながら数万分の一の自分、過疎地の映像で五十分の三の我が家、という様なキャンペーンを猫桜会で進めて貰う方向です。
かつては田舎に仕事がなかったから都会に出たという人もいます、今は、田舎でも出来る仕事が農業以外にも有るとアピールして行きます。」
「そうだな、松尾さんの所は本社機能の多くを田舎に移して、さすがに移転当初はトラブルが有ったそうだが今は落ち着いたみたいだ、他ではあれほどの集中投資は出来そうにないが…。」
「ニュータウンの人達、パワーが凄いですよね、お洒落なカフェがなければ作る、住みたくなる街並みにと、街作りを楽しんでるのが伝わり、他県からの客が来るぐらいになって、農村体験エリアが近くにあっても、あそこでは過疎地を体験出来なくなりましたね。」
「ですな…、本間くん、短期の過疎地体験が実現するとして、それは今現在過疎地で暮らす人にどう映るのだろう。」
「それぞれの事情が有るでしょうから一概には言えないと思っています、まずは一歩踏み込んでみるという段階で、でも、疎ましく感じる人がいるかも知れませんが、隣の家までの距離は都会とはずいぶん違いますからね。」
「そうだな、試行錯誤すらしないで自然に限界集落から廃村というケースも有っただろう、私は黒猫組の挑戦を応援するよ。」
「私も現状を見に行こうかな…、本間くんは被災地へ行く事有るの?」
「回数は多くないですが、黒猫組の幹部は交代で視察と観光を兼ねて行っています。
幹部の一人は、今、新婚旅行を兼ねて各地を回っていますが何時帰ってくるのか分かりません。」
「仕事をしながらなんだね、組長も?」
「はい、必ず夫妻揃って、現地の作業を手伝う事も有ります。
現地スタッフは恐縮してる様ですが、売名行為だからよろしくねって言いながら、しっかり作業をしているそうです。」
「照れ隠しなのかな?」
「加奈さまが、売名行為ですと仰られてから流行っているのですよ、でも組織のトップとして末端が何をしているのか身を持って体験、彼を我々のリーダーにした事は間違ってなかったと思っています。」
「確かにな…、組織が大きくなるとトップが末端の作業まで体験なんてなかなか出来る事ではないね。」
「被災地への支援活動を行いながら事業拡大してるのだよな。」
「はい、『猫桜』三店舗同時オープンが楽しみです。」
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