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水野鈴江-07 [化け猫亭-07]

「高松、加奈ちゃんはここのスタッフになりたいのか?」
「ああ、三年生になって視野を広げる必要を感じてると話していたんだ。
それで深沢から聞いていたこの店の事を思い出してな、今日は無理なお願いを聞いてくれて有難う。」
「いやいや、全然無理じゃない、外では飲まない高松も、加奈ちゃんがスタッフになったら気軽に来いよ。」
「そうだな、この雰囲気なら息子達も連れて来たいが、難しいか?」
「いや、スタッフを始める事になったら、出来れば親に来店して欲しいというのがマスターの方針なんだ。
成人してるとはいえ学生という立場だろ、娘がどういう店で働いているのか知ってて欲しいのさ。」
「会員制だから、その時だけか?」
「まあ、希望して条件が合えば会員になれる。
親の方が店への出勤回数が多いと笑った事も有るし、娘が卒業してからずっと通ってる奴もいるんだ。
家族で結婚報告しに来た子がいたし、雨で暇そうな日は元スタッフ達が集まったりする。」
「お気に入りの訳が良く分かったよ。
なあ、久しぶりに会うが急に老け込んで無いか?」
「いや、今日はな、山歩きの疲れが少し残ってるだけだ、鈴江ちゃんにも無理するなと説教されたから気を付けないといけないが。」
「髪の毛も十本ぐらい減っただろ、お互い若く無いないが…、会長職はまだ続けるのか?」
「まあ、名前だけだからね、社長に問題は無い、一通り経営状況を確認するのはボケ防止の意味合いがメインで、娘婿は理解してくれてるよ、お主はどうなんだ?」
「そういう考え方が有るのか、息子は儂が引退しても、福祉団体への寄付は続けると話してくれたから少し迷っていたんだ、ボケ防止と伝えて続けるべきかもな。」
「お互い苦しい時も有ったが何とかやって来た。」
「ああ。」
「何か感慨に浸っておられたのですか?」
「ああ、鈴江ちゃんがいないと寂しいなってね。」
「ふふ、お上手なんだから。」
「加奈はどうだ?」
「マスターにお任せして来ました。
女性の私でも憧れる美貌、気になってる事として社会問題を語る人です、深沢さんの紹介と伝えておきましたので、マスターにお断りする理由は有りません。
今は、学生主体の新たな事業計画もありますので。」
「高松、CAT'S TAILというたこ焼き屋さんを学生達が運営してるんだ。」
「あん、たこ焼き屋さんでは有りませんよ~、和洋のスイーツが楽しめる甘味処なのです。」
「そうなのか、ここで、たこ焼きのお裾分けを頂くから、たこ焼き屋だと思っていた。」
「高松さん、スタッフは主に周辺大学の学生で構成されている連合軍なのですが『就職前に経験して置きたい事』をキャッチフレーズに活動の幅を広げようとしているのです。
加奈さんが化け猫亭のスタッフにならなかったとしても、情報交換して行きますので教えて貰って下さいね。」
「ああ、面白そうだな、うん、今時の若いもんはしっかりしとる。
事業を拡大し自らの就職先にとかも考えているのか?」
「いえ、正社員はリーダーだけの方向性です。
あくまでも学生が実習を兼ねて運営し、次の代へ引き継いでいく事を理想と考えています。
どうしても学生だけで回らない所が出てきたら、そこは学生からではなく外部からと言われています。」
「あくまでも、就職前の経験という事か…。」
「ただ、化け猫亭のスタッフには起業を考えてる人もいまして、影響されている人もいます、今後の展開はまだ分かりません。」
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