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水野鈴江-03 [化け猫亭-07]

「初めまして水野鈴江と申します。」
「新人なんだ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「ここのスタッフには人を見る目が必要なんだよ、さあ、ずばり私の年齢は?」
「そうですね、三十から五十歳の間です。」
「はは、正解、神田の負けだな、私は内山、よろしくね。」
「どこが正解なんだ?」
「間違ってないだろ。」
「三十代に見える四十代後半が俺の売りなんだぞ、アバウトな解答にしても、五十迄含めるのは保険を掛け過ぎじゃないか。」
「三十を含めてくれた事を喜べよ、水野さんは実際どう捉えてたの?」
「神田さんの年齢はどうでも良い事ですが、質問なさったという事から実年齢は見た目より上、三十歳を含める事でご機嫌を取りつつ、五十歳を含める事で、これからの会話の流れをと。」
「うっ、小夜ちゃんの匂いがする。」
「すご~い、正解です、彼女からは色々教えて頂いてます。」
「はは、落としてから、褒めるというテクか、小夜ちゃんがスタッフになってからみんなの話がこなれて来たと思うね、以前は遠慮がちだったのが一歩踏み込んでくれる様になって、神田はいじられたいタイプだから遠慮なく弄んでやってくれな。」
「いえいえ、まだ修業が足りませんので。」
「いや、俺は負けないからな…、ねえ、水野さんは濱田祐太郎って知ってる?」
「え~っと、もしかして盲目の方ですか?」
「うん。」
「その人なら知っています、ベテランと比べると、まだどうかなって感じでしたが。」
「確かに大会で優勝した頃はそうだったかも、でもそれから仕事が増えた事によってかトークスキルが上がっていると思う、この前聞いたラジオ番組ではベテランにも突っ込んで行くし、話のリズムが良くなってて面白かった、カンペが読めないからテレビ番組のMCは無理だろうが、もっと活躍の場を広げて欲しいと思うんだ。」
「私も注目してみます。」
「しかし、生まれながらだから盲目を受け入れるしか無かったのだろうが、自分が事故とかで盲目になったら絶望するね。
視覚は五感の中で一番失いたくないと思うよ。」
「だよな、聴覚も好きな音楽が聞けなくなって辛いと思うが。」
「あっ、水野さんには嫌な話だったかな…。」
「いえ、聴覚障害の有る人と結婚した人の事を思い出しまして…、相手の女性は近い内に視力も失うと分かってた上で…。」
「重複障害か…、視力と聴覚を失うとコミュニケーション的にかなりきついな。」
「知り合いなの?」
「いえ、直接では有りません、伯父が大学時代のゼミにすごく良い奴がいたと話してくれまして、伯父自身、彼の事を思い出す度、胸が熱くなるそうです。
愛と覚悟の大きさを感じませんか。
あっ、御免なさい、暗い話をしてしまって。」
「いや、気にしないで、視覚障害の話を振ったのは俺だし、その人の事をもっと知りたいよ。
何か情報は無いのかな?」
「伯父に聞いてみます。」
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