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水野鈴江-01 [化け猫亭-07]

「初めまして水野鈴江と申します。」
「あっ、新人?」
「はい。」
「俺は初めてじゃないぞ、この前CAT'S TAILにいたよね、可愛い子がにこやかに接客してるな~って印象に残ってるよ。」
「有難う御座います。」
「そうか、掛け持ちなの?」
「CAT'S TAILのスタッフが増えましたので、しばらくは化け猫亭中心になると思います。」
「俺は岩田、こいつは平岩、よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「夜の仕事に抵抗は無かった?」
「CAT'S TAILでも夜に入っていましたので。
尊敬する桜さんの紹介ですし、真面目な企業人から色々学べる環境と理解しています、少し緊張はしていますが。」
「そりゃあそうだろう、岩田は見ての通り恐ろしい男だからな。」
「いや、お前程じゃないと思うぞ。
あっ、来たね。」
「あなた、早かったのね。」
「来たばかりだよ、こちらは新人の水野鈴江さん。」
「よろしくね、岩田の妻よ。」
「よろしくお願いします。」
「そうか、マスターは岩田の嫁さんが来ると見越して新人を送り込んで来たのだな。」
「でしょうね。」
「どういう事ですか?」
「彼女は学生時代、ここのスタッフだったんだ、彼女の紹介が無かったら俺達はこの店には入れなかったのさ。」
「紹介して貰うまで結婚してから三年掛かったがね。」
「どうしてですか?」
「夫で有っても化け猫亭は簡単に紹介出来ないの、優秀さをアピール出来る何かが無いとね、だから課長への昇進祝いのタイミングで、こう見えて真面目で誠実なのよ、この人。」
「こう見えての一言で褒めて貰った事が打ち消されてないか?」
「では、優しいを付け加えて上げましょう。」
「ふふ、仲良しなのですね。」
「水野さん、折角化け猫亭で働くのだから、しっかり学習なさいよ、そして男を見る目も養っておくの。
ここのお客様方は人間的に素敵な方が多いから一つの基準になるのよ。
私は就職してから、色々な人と出会ったけど魅力を感じる人の少なさに幻滅してた、そんな時に出会ったのが彼だったのよ、この人なら化け猫亭のお客になれると感じたわ。
私の目に狂いは無くて今に至る、かな。」
「あっ、ここの会員になるのは簡単では無いのでしたね、会員になりたい人は…、ドラマで見る夜のお店とは全然違うのに。」
「可愛い女子大生とおしゃべりが出来るからでしょ、触ったりしたら退場だけど。」
「それだけじゃないぞ、客同士情報交換出来る事が大きいし真面目な人ばかりだから居心地が良いんだ。
この環境を壊したくないから、紹介する時は皆が慎重になるそうだよ、自分はまだ紹介させて貰った事はないが…、自分のおまけで入れて貰った平岩が心配かな。」
「どこが心配なんだよ。」
「奥さんが妊娠して実家に帰ってる間に浮気とか。」
「しないよ、明日も会いに行くし、今は子どもの誕生をドキドキしながら待ってる。」
「その言葉が本当なら大丈夫かな。」
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