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猫田小夜-10 [化け猫亭-01]

「小夜ちゃんは知的美女揃いの化け猫亭の中でも独特な感性を持っているね。」
「宮田さん、それは、どう受け止めれば良いのですか?」
「ここで働いている女の子達はみんな自分のスキルを上げたくて狭き門であるマスターの面接に合格しているのだろ。」
「えっ、それは聞いていませんでした…、私は縁故採用…、先輩方に嫌われたくは無いのですが…。」
「大丈夫だよ、君は先輩方の邪魔にはならないだろうから。」
「どういう事ですか?」
「化け猫亭の客には大手企業の人事担当も居ると言えば分かってくれるかな。」
「成程、幾つかの謎が解けました。」
「他の子との違いも?」
「ええ、私は社畜を目指してはいませんので。」
「就職は考えていないのか?」
「はい、今は研究…、大学院へ進もうかと考えています、でも、人にこき使われる事無く金儲けが出来る道が見えたら大学中退も有りですね。」
「随分、極端なんだな。」
「まだ進路は固まっていませんので、自分の力を発揮出来る仕事をしたいとは考えていますが。」
「今は就職するにしても人手不足気味だから気楽なんだね、息子の時はひどかったんだよ。」
「若者の非正規雇用が増えた時期ですか?」
「ああ、皮肉な話でね、私は人件費を如何に抑えるか、という問題と向き合っていたんだ。
私みたいな仕事をしている人がどの企業にもいたから、息子の就職が難しくなって当たり前だった訳さ。」
「悪循環だったのですね、企業が人件費を押さえれば消費は伸びにくい、消費が伸びなければ企業の業績は伸びない、宮田さんはそれを考えていたのですか?」
「いや、恥ずかしい話だが、そういう視野で考える事は出来なかった、まあ、考えた所でどうにもならなかったけどね。」
「そう言えば、トヨタ自動車は、2018年3月期連結決算で最終利益が過去最高を更新したにも関わらず、将来への危機感は強いと記事で読みました、宮田さんはどう感じましたか?」
「トヨタは巨大だからね、抱えている従業員の人数も半端ないから油断は出来ないのだろう。」
「それでも、多くの利益を上げているのですから、抱えている末端の企業が少しは潤う事を考えてあげても良いと思いませんか?」
「どうなんだろう?」
「若者の車離れという事が話題になっていましたが、安い給料では車を買おうなんて思いませんよね。」
「だろうな、社会全体で所得の二極化が進んだ結果、内需は伸び悩んでいると思うよ。
それを考えると、人材も…、優秀な人は優良企業に流れる、だからトヨタ系列の仕事をしていても、末端の企業に優秀な人材は行かない。
なのに、トヨタと同じ様なシステムでの改善改革を社員に求める。
まあ、底辺の企業なんて、大きな仕様変更とか有ったら取引終了で切り捨てだから気にもしてないだろうがね。」
「トヨタ関連にお詳しいのですか?」
「そうでもない…、今は改善されているのかも知れないが、以前、力の無い人が改善案を出せなくて苦しんでいたり、中間管理職が精神を壊したりとかトヨタの社員から聞いた事が有るんだ。
巨大組織では歪も…、いや、巨大な組織でなくても歪は有るのだろうな。」
「そうでしょうね、だから社畜にはなりたくないのですよ。」
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