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神沢祐樹-130 [高校生会議2-21]

「社長、挨拶回りお疲れさまでした。」
「佐藤さん、あれで良かったのですか?」
「ええ、良い体験をさせて頂けました。」
「えっ?」
「私だけで交渉していたら、あそこまでスムーズには行きません。
お二人と話された後の人達は皆さん骨抜きでした、工務店の大将が工場改装ぐらいなら俺のポケットマネーで完成させても良いぐらいだ、なんて話したのには驚きましたよ、いったいどんな技を使われたのですか?」
「彼の話が面白かったので色々教えて頂いて…、この地の活性化の話と…、絵美とは結婚するつもりだって話したぐらいだよな。」
「ええ、元気な子を産めよって、かなり気の早い方でした。」
「う~ん、カップルでのデビューにはリスクを感じていましたが、プラスになる一面も有ったのですね。
ただ、お二人にとっては撮影だけの予定だった今日のお祭り見物、要望に応える形で歌を披露して頂く事になってしまいましたが、本当に宜しかったのですか?」
「はい、生で、特に小学生の前で歌わさせて頂く機会は少ないですからね、直接反応を見させて貰えば今後の曲作りに活かせると思いますし、間もなく発売するカバーCDの宣伝にもなりますよ。」
「佐藤さん、CDが沢山売れれば、工場への投資も前倒しし易くなります。
工場の一期工事計画では外観にまで充分な予算が回せていませんが、二期工事を前倒しして綺麗な工場とすれば、従業員募集が楽になりませんか。」
「はい…、絵美お嬢さま、内も外も綺麗で清潔感溢れる工場にする事は、お菓子の製造工場ですので大切な事です。
お二人に宣伝して頂く商品の製造工場の外観が古びていたら、LENTOのイメージダウンにもなってしまいますので…、予算関係なくもう一度相談しておきたいと思います。」
「工場近くにお菓子の直売所を兼ねてのグッズ販売店や飲食店を開いた上で工場見学が出来る状態にする、という目標、佐藤さん的には、どれぐらい先と考えておられるのですか?」
「それは、この地の活性化という観点からも、早く実現させたいです。
今日、改めて工場周辺を回ってみて、空き地や空き家に気付きました。
この地を一つの拠点として資金を投入して行くので有れば、そうですね…、結論を下すのは工場が本格稼働してからになりますが、自分としては来年の夏休みには観光客が足を止めるまでにしたいと思います。」
「では、そこに向けての予算計画を出して頂けませんか、それに合わせて資金確保を考え直してみます。」
「分かりました、多少の試算はして有りますので、三パターンほど提出させて頂きます。
正直、昨日まではかなり難しいと思っていました、でも今日の歓迎ぶりから、それ程では無いと今は考えています。」
「では、私達が歌で頑張れば、佐藤さんは更に安心出来るのですね。」
「はい、ですが、絵美お嬢さま、無理だけはなさらないで下さい。」
「絵美が無理しない為に、喉を温めておくのは小学校でしたか?」
「ええ、警備担当に確認させていますが、この後のスケジュール…、お食事はどうされますか?」
「そうですね、歌う前に食べるのは控えたいので、今の内に少しだけ口に入れておきたいです。」
「では試作品をベースにしたフルーツ盛り合わせを用意させましょうか?」
「絵美、どう?」
「どんな感じになるのか、是非食べてみたいです。」
「では、少々お待ちください…。」

「…、美味しいです、この試作品は甘さを抑えてフルーツとのバランスをとっているのですね。
全体の食感はフルーツだけでは味わえないものですし…、バニラエッセンスもほど良いです。」
「はは、絵美の食レポを聞いてたら更に美味しく思えてきたよ、この試作品は前のとは違うのですね。」
「はい、開発チームが自信作を送ってきました。
前のとは製造工程がほとんど同じになりますので、新たな製造ラインは必要有りません、でもフルーツとの相性の良さは全く違います、単品で食べるなら前のもの、フルーツと組み合わせるのなら今回の試作品ですね。」
「直営店の看板メニューになりそうです…、いや、これなら知り合いのお店で提供して貰って…、う~ん商品単品としての売り上げは大きく成らないにしても、宣伝効果は期待出来ますね。」
「はい、LENTOにちなんだネーミングで店のメニューに加えて頂ける様にマーケティングチームとも検討するつもりです。
単品で食べる、フルーツと合わせて食べる、二つの商品を提供する事での相乗効果が期待出来ると思っています。」
「そうですね、種類を増やし過ぎてしまうと製造原価が上がってしまいますが、今後の展開はどうします?」
「まずは二種類で始め、様子を見ながら季節ごとの商品を含めて四種類、後は売れ行きに伴って製造ラインを増やしてからの検討と考えています。
ベースになる商品がどの程度の売り上げを確保し維持出来るかが最大のポイントになりますが。」
「価格設定も難しそうですね、まあ、何にしても今後が楽しみです、ワンマン社長に色々教えて頂きましたからそれに習って大きく稼ぎましょう。」
「はは、もちろんそのつもりですが、神沢社長は仕事ばかりでなく今日のお祭りも楽しんで下さいね、予定外のステージに対して、町の方々は夜店での撮影中もしっかりガードして下さるとの話が警護担当から届きました。」
「へえ、それなら、落ち着いて金魚すくいに挑戦出来るのかな。」
「たぶん。」
「でも、祐樹さま、すくった後の金魚はどうされるのです?」
「佐藤さん、工場の庭に池とか作れますか?」
「それぐらいは簡単です…、ですが、実際に社長がすくえた金魚がいればの話、おまけで貰った様な金魚の為に池を作ったなんて知られたら、恥ずかしく有りませんか。」
「う~ん、それは佐藤さんからの挑戦として受けますが…、縁日の金魚すくい、その後の悲哀を歌にしようかな。
ねえ、絵美は金魚すくいに思い出とか有る?」
「いいえ、お話しに聞くだけで体験した事は有りません、祐樹さまはお上手なのですか?」
「いや、やってみたかったのに、お姉さん方に囲まれてたどり着けなかった過去が有る…、それ以来縁日には行ってないんだ。」
「はぁ~、社長は罪なお方だと思いますが、それなりの苦労もお有りだったのですね。」
「同情はいらないです、絵美、まだ時間は有るから金魚すくいの必勝法を調べるぞ。」
「はい、やはり、力学的視点からですか?」
「ああ、だがその前に上手な人のテクニックを知るべきじゃないのか?」
「ふふ、テクニックって言葉はプロっぽくて憧れます。」
「よし、三十分で何とか。」
「…、社長、申し訳有りません、ネット回線はここでは…。」
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