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神沢祐樹-05 [高校生会議2-09]

「祐樹さま、お早うございます、お待たせしてしまったかしら?」
「いや、俺も来たばかりだよ。
なるほどね、その洋服は君に似合っているだけでなく、俺と並んでも違和感が無いという事か。」
「うふっ、お友達だとすぐ分かりますでしょ。」
「分かり過ぎるのもどうかと思うが…。」
「何か不都合でも有りまして?」
「いや問題はないが…、車で来るとは思ってなかったよ。」
「あらかじめ予定が決まっていれば普段から外出は車です。」
「う~ん、運転手さん付きだったね、この後路線バスに乗ろうと思っていたのだが抵抗有るかな?」
「いえ、初めての経験ですが祐樹さまとなら安心です。」
「そうか、座れないかもしれないし、お年寄り優先だからな。」
「存じております、新聞記事で目にした事が有りますので。」
「絵美は新聞読むんだ。」
「はい、中学に入学した頃、父に勧められまして。」
「新聞が必ずしも中立の立場で正しい事を書いている訳では無いって知ってた?」
「もちろん理解しています、私は千景さまのファンなのですよ。
千景さまは番組の中で、いい加減な情報の多さを指摘しておられました、歴史ある新聞社の記事で有っても偏りが気になると。
それで、注意して読んでみたら、確かに偏りを感じさせる報道が有りました。
何紙か見比べてみると面白いです。
新聞社によって書き方が違いますから、自社の意に沿わない出来事は取り上げなかったり、小さな記事でしか紹介していない事も有ります。」
「だよな、岩山政権になって、取り敢えず政権批判、という記事は減ったと思うけど、兎に角批判の対象は欲しいのだろうね。
でも絵美が新聞をそこまで読んでいるのは意外だったな。」
「毎日長時間読んでいる訳では有りませんが大切な事だと考えています。」
「ネットのニュースも見るの?」
「いえ、見た事は有りますが、いい加減な記事が多いですし、文章力の無さ過ぎる記事も、その様な話を父にしましたら、ネットでは自分が興味の有る記事に片寄る可能性有ると指摘されましたので、やめにしました。」
「それは賢明だと思うよ…、ここでストップ、このバス停から乗るからね。」
「ここで待っているとバスが来るのですか?」
「ああ、そういうシステムだ、後五分ぐらいで来る。」
「時間通りに?」
「ここは路線の出発点に近いから誤差は少ないんだ。
でも路線バス優先システムが導入されてるから、悪天候だったり特別な行事のある日以外はそれほど大きな遅れは無いんだよ。」
「どんなシステムなのか知りたいです。」
「路線バスの位置情報に合わせて信号が切り替わるんだ、だから路線バスは信号待ちの時間が少なくて済む。」
「そうなのですか、一般のドライバーの方から苦情がありそうですが。」
「特に問題は無いみたい、路線バスに合わせて走ると信号待ちが減るという利点も有るそうだ。
ドライバーの性格も有るから微妙では有るけど、省エネに繋がっている可能性も検証中なんだよ。
少なくともバスにとっては信号待ちの回数を減らす事で確実に燃費は向上したと思うね。」
「システムの初期投資は回収出来るという事ですか。」
「ああ、単純計算は難しいが、公共の路線バスが時間通りに来て、しかもバス亭で止まるハンディを、信号待ちを減らす事でカバーしたから所要時間が短くなった、それでマイカー通勤よりバス通勤を選ぶ人が増えるかもしれない。
そうなれば、単位時間あたりに道路を走る車の数を減らす事に繋がり、色々な無駄が減るみたいなんだ。」
「やはり渋滞とか…、車ばかり使っている私は…。」
「い、いや、絵美は一人でバスに乗っては行けない、今日は特別、これからも社会の為に頼むな。」
「えっ、どういう事でしょうか?」
「世の中には悪意ある連中が少なからずいるという事、今日は絵美の最初で最後の路線バスの旅にしてくれ。」
「良く分かりませんが、分かりました。」
「さあ、バスが来たよ。」
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