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選挙-04 [高校生会議-15]

投票日、開票速報。
党に直接関係しないチーム遥香メンバーは城のホールに集まって見守っている。
まずは岩山党首など岩崎関連が強い地盤を持つ候補の当選確実が報じられた。

「この辺りは圧勝して当たり前だ、なんせ岩崎が集中投資して町を発展させたエリアだもんな。」
「問題はこの勢いがどれ程の広がりを見せたか…、その結果ですよね、遥香さま。」
「ええ、まともな政策とイメージ戦略、幅広い層に訴える事は出来たと思いますが…。」
「遥香さま、マスコミ関係者が党首当選を受けてそろそろ取材を開始させて頂けないかと。」
「う~ん、先は長いのにね…、少しお話しさせて頂いた後、席を外させて頂いてもよろしいかしら。」
「そうして下さい、静香達、側近も連れて行って下さって構いません、大勢が判明するまでは私達おばさんとおじさんでお茶を濁しておきます。」
「有難う佐竹さん、じゃあ忍も一緒にお茶を濁しててね。」
「は~る~か~さま~、私まで、おばさまの一員に加えないで下さいよ~。」
「大丈夫、忍の実力は皆さん認めて下さってるわよ。」
「そうじゃなくて~、私も遥香さまのお側にいたいです~。」
「忍は我儘だな~。
佐竹さん、マスコミの方をお通しして下さい、忍、マスコミ対応お願いね。」
「はい。」

忍は身内の中ではいじられキャラとして定着している。
ただ、本人が嬉しそうなので周りも笑っているだけだ。
だが仕事となると…。

「代表質問される記者の方は決まっていますか。」
「はい、私が。」
「カメラの方は位置を速やかに決めて、落ち着いて質疑が出来る様にして下さい。
あっ、そこの方近過ぎです、他のカメラに入ってしまいます…。
遥香さまに失礼な事が有りましたら、今後の取材をお断りさせて頂きますのでよろしくお願いします。
準備が整い次第始めさせて頂きます…。」

記者達は事前に待機していたのだが、党本部の映像に充分な時間を取って欲しかったので、マスコミの入室を許可したタイミングは岩山さん達が当選の喜びを充分語った後にした、主役は岩山さん達だからだ。
忍の仕切りで会見が始まる。

「それでは遥香さまの会見を始めさせて頂きます、代表質問の形を取らさせて頂きましたので、代表の方どうぞ。」
「…放送の山崎です、遥香さま、開票速報開始直後の当確ですがどう感じておられますか?」
「マスコミ各社の分析通りですので特に思う所は有りません。」
「今回の選挙戦では豪華な応援が話題を呼びました、本当に皆さんノーギャラだったのですか?」
「はい、問い合わせにお応えさせて頂いた通りです。」
「しかし超豪華な顔ぶれ、遥香さまに捧げる歌も飛び出して、色々勘ぐる声も出ています。
実際は巨額のお金が動いたのではないのですか?」
「ふふ、お金の話ですか…。」
「待って下さい! 代表質問という事で譲りましたが、我が社は真逆の情報を得ています。
遥香さまに対して失礼な話をしている質問者に問題が有ります!」
「忍、どうしましょう?」
「とりあえず代表質問の方のお顔と所属会社を、もう一度明確にさせて頂きます。」
「えっ、私はただの記者で…。」
「ただの記者なら何を言っても良いのですか? 質問に悪意が感じられましたが、善意の協力者の心を踏みにじる様な質問を見過ごせると思っているのですか?」
「いえ、事実はどうなのかと、普通有り得ない事じゃないですか。」
「遥香さまの事を、あなたの常識で考えて、ろくに調べもしないで質問していたのですね。
もしかして、あなたはどこかの党員ですか?」
「そ、それは…、思想の自由は保障されています。」
「嘘の話を広める自由は有りませんよね。」
「嘘かどうかは…。」
「すいません、…新聞の石井と申します。
岩崎王国との関係は比較的弱いですから、中立的立場でお話させて頂けると思います。
岩崎王国の世界展開から、まさかの海外スター登場でしたので、すぐに取材させて頂きました。
さすがにご本人からとは行きませんでしたが、周りのスタッフの方は遥香さまの名前を出すだけで笑顔になり、これから資金面でも遥香さまに協力させて頂けることが嬉しいと話していました。
その内容を記事にまとめさせて頂こうと今日の会見に参加させて頂いたのですが。」
「…放送の坂崎とお申します、私は国内の大物歌手に直接話を伺っています、遥香さまにべたぼれで自分の資産を岩崎王国で活かして欲しいと話しておられました、ギャラの話をお聴きしたところ、遥香さまからギャラを頂くなんて有り得ないだろうと怒られました。」
「有難う御座います、山崎さんはどの程度の裏付けを取られてのご質問だったのですか?」
「いえ、その…。」
「忍、私達に敵意を抱いている放送局が分かっただけで良いじゃ有りませんか…、う~ん、前に出演した時はそんなに嫌われてると感じませんでしたが…。
でも、石井さん坂崎さんにフォローして頂けた事がとても嬉しいです。
有名になるとどうしてもアンチの方が現れる様で、心を痛めていたスタッフも喜んでくれるでしょう。」
「あ~、だめですよ、そんな笑顔を差し上げては、山崎さんは、笑顔で男性ジャーナリストを丸め込む遥香さまとか、番組で流しますよ。」
「忍、私の顔は自分の気持ちに正直なだけなのよ…、それも許され無いの?」
「山崎さんと局のカメラマンに退席して頂くまでは我慢して下さい。
はい、山崎さん退席お願いします。」
「そんなの横暴じゃないですか、訴えますよ。」
「構いません、その様に報道なさって下さい、ここは私有地ですからカメラマン共々速やかに、退去なさらない場合は不法侵入として警察を呼びます。」

だらだらと続く選挙特番の冒頭に起きた出来事、山崎さんの局以外は何度もこの茶番を流した。
会見場は石井さん達のお陰もあって、大金を積んで応援して頂いたのではなく、逆に今後の岩崎王国の活動に対して金銭的な応援も約束して下さっている、と言った話ですっかり盛り上がってしまった。
さらに、そこへ入って来るのはみどりの風候補が当選したという情報ばかり、会見場の記者は私のファンばかりだった様で…。
どうして代表質問が山崎さんだったのか聞くほど私は野暮ではない。
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