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夏休み-14 [高校生会議-06]

翌日はこの地の観光スポットでの営業用写真撮影が中心となったが、それなりに楽しむ。
夕方からはお祭りに呼ばれた。
ここは歴史が一旦途切れた村、再生してから新たなお祭りを始めている。
今回のお祭りは私の訪問に合わせての事だそうで、大歓迎を受けた。
天気が良かったので屋外ステージでは地元サークルによる演奏などが繰り広げられた、私達は特別席でゆったりと鑑賞させて頂く。
元からのプログラムに加え、洋子が親衛隊に指示を出し、急いで仕上げた踊りも披露された。
拙くは有ったが、二つの地域の高校生が協力して完成させた事に意義が有る。
まあ、隊長の衣装を着た洋子が舞台袖に立つだけで大盛り上がりとなったのだが。
それに対抗心を抱いたのか、歌でなく踊りならばと頑張って飛び入りした優子さんの踊りが変に受けて…、先輩方からサークルへの熱い勧誘を受けていた。
どんなサークルなのかは知る由もないが、彼女は来春から大学生だ。
私はと言うと、裏でお父さまが手を回して歌を歌う事になった。
社長権限でのごり押しだが、喜んでプログラム調整をして下さったそうだ。
伴奏の方とも軽く合わせてある。
テレビ局のカメラも何台か来ているが祭りの取材を口実に私の歌を流すというお父さまの作戦、周りのスタッフは大変だったろう、お母さまが話して下さった通り、親馬鹿全開だ。
若干のプレッシャーはあるが、歌手デビューする訳でも無く、姫の余興なのだから優子さんレベルでなければ問題ないと勝手に決めつけて舞台へ。

「今日はお祭りに呼んで下さって有難う御座います。
楽しいお祭りで旅の良い思い出となりました。
皆さんへのお返しを考えていましたら、親衛隊隊長から歌を歌わせて頂く様にと、偉そうにしている私でも、悲しいことに鬼隊長からの指示には逆らえないのです。
勿論プロでは有りません、申し訳ない気持ちも有るのですが聴いて下さい。」
歌の方は…、

オズの魔法使いから、Over the Rainbow
サウンドオブミュージックから、My Favorite Things
マイフェアレディから、I Could Have Danced All Night

昔の曲を選んだのは幅広い年代層に知られていると考えての事、お父さま指示によるCDにも入れる。
だが、何よりも小さい頃から英語に慣れるためと、親が用意してくれたDVDを見ながら歌い続けて来た曲、自信を持って歌える曲を選んだという訳だ。

歌い終えて大きな拍手と歓声を頂いた。
姫さま風にご挨拶して袖に入ると…。

「姫さま素敵でした、私達の姫さまが美しいだけでなく歌声までも綺麗で、感動で涙が…。」
「遥香さま、会場が収まりません、アンコールとかは無理でしょうか?」
「伴奏の方とは三曲だけです…、そうですね、一曲だけと先にアナウンスして頂けますか。」
「有難う御座います、今まで何度もイベントを開いて来ましたが、ここまで盛り上がるのは初めてなのです。」

アンコール曲に選んだのは、Amazing Grace、アカペラで。
先ほどまでの歓声が完全に消えた静寂の中、自分の声だけが響き渡る。
屋外ステージの空気は新鮮で心が込めやすかった。
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