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127-CM [岩崎雄太-13]

大阪での公演はDVDなどの制作期間を挟む為一時中断、一部のスタッフは一旦村へ帰った。
残ったモデル達はプロの指導を受けたり撮影に臨んだり、正平は岐阜から来たバンドマン達と打ち合わせや練習、録音と充実した日々を送っている。

「史枝、正平はバンドメンバーとはどうだ?」
「うん、何か馴染んでる、バンドの人達には兄の様に接して下さいとお願いしておいたのだけど、暖かく包みつつ、プロとしての心構えを仕込んでいるって感じかな。」
「良かったな、少し安心した、俺では音楽的な部分とかは手助けしてやれなくて。」
「ふふ、でも正平は譲治の事、兄ちゃんってあんな感じなのかなって話してたわよ。」
「はは、で、史枝は姉なのか恋人なのか、実際どうなんだ?」
「えっ。」
「そろそろ、結論を出しても良いんじゃないのか?」
「うん…、自分でもよく分からなくてさ、正平の事は大好きだけど自分達が結婚して子ども作ってって分からないじゃない。」
「もう少し時間が掛かるという事か、まあ結婚は兎も角、恋人である事に違和感はないのかな。」
「そうね。」
「ならば見守って行くよ、何か有ったら相談してくれな。」
「うん、あ~、譲治はこんな感じで女心をくすぐってたんだ、ふん、私には正平がいますからね。」
「おいおい、これぐらいの事でくすぐられてるんじゃないぞ。
正平のファンだって着実に増えてるが大丈夫なのか。」
「あ~ん、そこなのよ、変な女が現れたらどうしよう。」
「そうならない様に、恋人設定にしてる訳じゃないか。」
「うん…。」
「史枝、里美姉さんの動きは知ってるだろ。」
「もちろんよ、私が絡むとややこしくなるから、私はそこから離れたポジションでグループ企業間の連携を進めてるけど。」
「ああ、里美姉さんも褒めてた、異業種でも同じエリア内を地盤にしている工場とかに交流の場を作って婚活を盛り上げたり、仕事面でも協力体制を模索すべく指示を出しているのだろ。」
「里美姉さんのやってる事に比べたら大した事ないのよ。」
「それでも正平関連で時間調整しながらだからな。」
「ふっ、それぐらい出来なきゃ里美姉さんとは働けないのよ。」
「かもな、なんたってCMの仕事を決定させたそうだから。」
「えっ、成功したの? この前は、珍しく弱気なことを話してたのよ、姉さん。」
「当初の構想からすれば、まだまだなんだってさ、それでも大企業の広告塔に俺達がなる訳だ。
俺達が作り出してる世界観をベースにしてな、俺もだが正平と史枝はその中心となる。
その世界をハッピーエンドにしたいと考えてる人は少なくない、だがそれは史枝から恋愛の自由を奪いかねないのだが…、正平と別れるというストーリーの可能性は否定できないだろ。」
「やめて! そんなの嫌、もう一人は嫌なの、正平を私から盗らないで! 正平だけが私を…。」
「はは、もちろんさ、その代わり浮気は許さないぞ。」
「えっ?」
「すでに、多くの人の願望なんだ、史枝と正平が幸せになってくれる事が、そう思う人はこれからどんどん増えて行くだろうな。
そうなった頃、史枝の前に正平とは全く違うタイプだが、史枝好みの男性が現れるかもしれない、人の心に絶対はない。
結婚していなければ、心変わりを誰も非難しないさ、普通ならね。」
「ふ~、分かったわ、覚悟を決めろと言いたいのね、正直、過去のトラウマが正平への気持ちに強く係わってるのかとも思う、その辺りの気持ちに整理がついてしまった時、正平とどうなるのか自分でも怖いのは事実よ。」
「初めて聞いたな。」
「簡単に言える事ではないわ。」
「史枝には保険を掛ける権利が有るし、掛けて良いと思う。」
「保険?」
「今、話してくれた事を公表する事は酷かもしれないが、逆にすっきりするかもしれないぞ。」
「でも、今は正平の恋人役よ、いえ、本当に恋人なんだけど、大好きなのよ。」
「保険とは先の不安に対して掛けるものさ。
それと今の正平は史枝しか見えてなくて安心しきって向上心に欠けている、史枝に保険を掛けると同時に、正平には少しプレッシャーを掛けてやろうという事だ。
正平は馬鹿じゃない、能力に偏りは有るがな、でもまだ精神的には子どものままだ。
そこが魅力では有るが、何時迄もそのままでは史枝が浮気しかねないだろ。」
「も~、みんなの譲治兄さんにはかなわないわね、少し考える時間が欲しいけど…。
その…、CMのプランとかは里美姉さんから聞いてるの?」
「企画案は今から送るから検討してくれな、優先案件だぞ、ほらポチっとな。」
「もしかして、譲治が総合演出の一環として動くの?」
「当たり前だろ。」
「はぁ~、分かったわ、譲治の手のひらの上で踊る事になるのね。」
「はは、素敵に踊ってくれよ。
その案はまだ里美姉さんと史枝にしか見せないつもりの原案だから対案があったらどんどん出してくれな、みんなにはタイミングを見計らって公表し意見を求めて行くつもりだ。」
「分かったわ。」
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