SSブログ

111-オーデション [岩崎雄太-12]

スーパー銭湯大ホールの舞台に立つ人を募集、というオーデションは一般投票の形で進められている。
希望者は各自の都合を考慮し、日時を調整しながら個別に舞台に立ちそれを撮影。
審査はその映像を大ホールで流し銭湯の客が投票という形と、ネット上で映像を公開し投票して貰うという二本立て。
順位を決める事が目的ではなく、集客力の判断が重要。
応援したい、から、あまり見たくない、までの五段階評価で投票して貰うが、若者から全く支持されなくても、中高年からの支持が多ければ合格。
投票である程度の評価を受けた人は仮契約の形で舞台に立ち始めている。
オーデション合格者を受け入れる事務所の担当は恵子。

「恵子、仮契約の方はどう?」
「正平含め五人は本契約に進めても問題なさそうですよ、里美姉さん。
詐欺師のおっちゃんの進行が面白くて、おひねりも充分頂けています、仮契約の素人さん達は生活が掛かってませんから、今の所収入を気にしなくていけないのは正平だけです。」
「おっちゃんは株式会社岩崎の社員だけど、今後はどうなの?」
「本心が分かりにくい人ですが、楽しんでるみたいです、おひねりも貰えていますし。」
「話術よね、あっ、でもおひねりの税金にも気を付けてね、意図しない脱税なんて事があってはいけないから。」
「大丈夫ですよ、舞台に投げる形にしなかったのは正解です、不正のない形に出来ましたから、必要なら領収書だって発行出来ます。
でも、詐欺師のおっちゃん宛に頂いた分はそのまま養護施設へ寄付するシステムにしてくれと言われています、足るを知ったからだとか、彼はもう二度と犯罪を犯す気はないと思いますよ、その為に自分への戒めとして詐欺師を名乗り続けているのだと話してくれました。」
「そっか…、でもここはちょっとした事で誤解を受けかねない人が多いから気を付けてね。」
「はい、私も経験が有りますから…、親がいないというだけで…。」
「うん…、でも、それに負けなかったからここにいるのよね。」
「先輩に…、一期生の先輩に引っ張って貰いました、ここに私達の村を作るから都会に未練がなかったらって…、正直言うと未練がなくはなかったのですが、今は迷っていません、ここを発展させたいと、詐欺師のおっちゃんだけでなく魅力的な人が沢山いますから、ここには。
都会で暮らしていたら出会わなかったろうなって思うんです、そんな人達とは、人生のスタートが違いますからね。」
「ふふ、スタートはどうであれ、恵子は素敵に人生を歩んでいるのね、ここで。」
「はい、オーデションに来られる方は年齢に関係なく素晴らしい方ばかりなんですよ、売れっ子になって養護施設へ沢山寄付したいという方ばかりなんです。」
「この取り組みを成功させたいわね。」
「はい。」
コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。