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105-部下 [岩崎雄太-11]

「里美、史枝はどうだ?」
「はい、お父さま、真面目に取り組んでくれています、経営的な事とは今まで全く向き合って来なかった割には吸収が早くて、ああいう子が大学進学を考えられなかったという現状は変えて行きたいと思います、高卒でも能力を活かせる環境を作れたら良いのですが社会のシステムとして今の企業では難しそうですから。」
「そうだな、彼女、正平の事は何か言ってたか?」
「はい、人とはペースが違うけど優しくて暖かい、でも過去を引きずってるのかと感じる事も有ると、ただの馬鹿と言ってる割には結構好意を抱いている様子でした。」
「はは、面白いカップルになるかもしれないな、正平には史枝を通して、そうだな史枝が正平に相談する形で課題を与えてみてくれないか。」
「分かりました、恐ろしくバランスの悪い正平の能力から何か引き出せるかもしれません。」
「後、史枝がここを出ての研修に向かう時は、適当な理由を作って正平の研修も…、難しいかな…。」
「史枝と相談してみます、多分一人で行くより心強いだろうと思います、問題は正平の研修内容ですが…、それを探すという名目でも構わないですよね。」
「そうだな、彼が本当に興味を持てる事を探す旅だな。」
「ふふ、手の掛かる子程可愛いですね。」
「う~ん、母性本能をくすぐるのが得意なのかな。」
「あっ、その線でも研修を考えてみます。」
「他の連中は迷いながらも自分の道を決めて進んでいる、正平も何か見つけて欲しいものだな。」
「はい。」
「史枝の他はどうなんだ?」
「まだこれからです、目を付けてるリーダー候補は各部署でさりげなく研修中ですが、史枝のレベルまでには時間が掛かる人も多いかと思っています。
でも工房の師匠連中が自立を考えてくれてますので、工房メンバー、農業メンバー、訓練生のみんなが、自立して支援する側に立ちたいと強く考え、仕事に対して前向きに取り組んでいます。」
「ここからの拡大は段々難しくなっていく、人材を育てていかないとペースが上がらないからな。」
「はい、大体、山陰なんて少々陰気な名称を付けた人を恨みたいですよ、都会から訳ありの人を受け入れ続けるにしても、過疎とか人口密度が低いとかマイナスイメージが強すぎます。」
「土地は安くても工場を誘致するには労働力の不安が有るし、輸送コストもかかる、その辺りを解決したいが、まずは福祉村を拡大して行くしかないのかな。」
「村の拡大だけなら、協力企業も多くて問題有りませんが、若手が都会へ出て行ってしまう現実は…、弟や妹がこの地に足場を築くにしても、この地で生まれ育った人と仲良くなって欲しいと思いますし。」
「やはり産業構造から見直さないとだめだな、その視点は多い方が良いだろう、里美は今まで通り動いてくれ、私は違ったが視点で策を練ってくれそうな人を当たってみるよ。」
「はい、でもお父さまがここの事ばかりに時間を使っていて問題ないのですか?」
「はは、里美と違って優秀な部下が沢山いるからね、今は私が表に出なくてはならない様な案件はないのさ、どうだ羨ましいだろ。」
「ふっふ~、私だって着々と…、まあ部下では有りませんが協力して下さる方を増やしてますよ。」
「ならば中国地方活性化計画は順調に行けそうだな。」
「お、お父さまのスケールは大き過ぎます、そんな大それた事こそ優秀な部下に命じて下さればよろしいのに。」
「はは、夢みたいな話は大切な娘に託したいじゃないか、その方が楽しいし。」
「も~、お父さまったら…。」
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