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83-逃げて [岩崎雄太-09]

工房では。

「聞いてはいましたが、竹細工や縫いぐるみの他にも色々作っているのですね。」
「ええ、商品として利益を上げてる物ばかりでは有りませんが。」
「子ども達の為にはどんな物を作っているのですか?」
「簡単なバッグとか小物入れとかですが、名前を入れる様にしています、あなたの為に作った物って伝わる様に、みんな顔見知りですから希望を聞きながらです、最近では作り方を教えて欲しいという子もいて、休みの日は一緒に作業をしてます。」
「有難う御座います、子どもの頃から色々な大人と接するのは良い事ですから。」
「楽しいですよ、お菓子作りに挑戦するグループがありますし、上級生の作る食事も美味しいです。
料理が出来れば生きていけると言われているそうで、メニューも増えています。」
「食堂担当が先生役なのですね。」
「はい、職業訓練の子達も手伝ってくれています、家族とまでは行かなくても仲良しグループにはなっていますよ。
トラウマがあるのか他人同士の喧嘩でも極端に嫌がる子がいますので、揉めそうになったら周りがすぐ止めてくれます、お陰でいたって平和です、いじめを受けてた子が多いからかもしれませんが。」
「そうですか、子どもによっては、ここでのんびり暮らして行くという選択肢も有りだと考えていますが如何でしょうか?」
「競争の厳しい都会より良いかも知れません、みんな高校を卒業したら出て行かなくては行けないと考えていますが、ずっとここで暮らしたいという子もいます、仕事が有れば良いのですが。」
「皆さんが頑張って下さっているお陰で、この村はもっと大きく出来そうです、利益が出ている部門も増えています、空いてる土地はまだまだあります。」
「私は訳あってここへ逃げて来ましたが、来て良かったと思っています、ずっと都会暮らしでしたから不安も有りました、でも満員電車に乗らなくて良いですし、お金の心配も無くなりました。
今は、小物を作りながら商品企画の仕事もさせて貰っています。
私自身ずっとここで暮らして行けたらと考えていますが大丈夫でしょうか。」
「不安なく暮らして頂けるように、特にこの村は部外者の立ち入りを制限した状態で発展させて行くように指示が出ています。
私有地に出入り出来る部外者は近隣のお年寄りぐらいですが、何か有りましたらすぐ所長に話して下さい。
ご希望で有れば死ぬまでここで生活して下さって構いません。」
「有難う御座います、セキュリティチェックは、ここへ逃げて来た女性メンバーが交代で行っています。
こんな所まで追っては来ないと思っていても…。
私はかなり落ち着きましたので新しいメンバーの相談相手もしています、皆、殺されるかもしれないという経験をして来ました。
それぞれ思いは様々ですが、しばらく暮らしていると中途半端に逃げているより思い切って良かったと話してくれます、ここなら所在が知られてしまっても大丈夫かもって思えますから。」
「関係者は全員、絶対皆さんを守ると話しているそうです、もちろん私もです、不便な部分をどれだけカバー出来るか分かりませんが。」
「いえ、私達は充分お世話頂けています、私達より子ども達の未来をお願いしたいです。」
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