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75-養子 [岩崎雄太-08]

職業訓練校、雄太の歓迎会は食堂で地味に行われた。
雄太が好むのは職業訓練に対して真面目に取り組む姿で有り、それが疎かになる事は喜んで貰えないと教えられた事による。
代表者三名が自分の取り組みを説明した後、雄太は。

「皆が、真面目に取り組んでいてくれていて嬉しいよ。
でね、今日は少し微妙な相談が有って来たんだ。
私が社長として大勢の人の上に立ってる事は知ってるよね。
株式会社の仕組みもカリキュラムに入ってるけど、理解出来てるかな。
私は大株主で企業の業績に応じて、沢山の配当金を頂いている。
まあ、お金持ちな訳だ、でもお金持ちがお金を貯め込んでしまっては経済が良くならない。
しばらく前までは事業への投資という形でお金を使って来たが、それも社員が頑張ってくれたおかげで上手く行ってる。
それで、事業への投資ではなく、福祉村を始めたんだ。
岩崎村は大きく投資して事業として成功させたが、ここは利益が出なくても構わない、尤も大人達は利益を出そうと頑張ってくれているがね。
で、皆の心に刻んで置いて欲しいのは、一度でもこの村で暮らした人は、真面目にやっていれば一生我々の一族の一員、つまり関連企業の従業員やその家族と同族として扱われ、助けを必要とする時は必ず手を差し伸べられるという事。
例えば、うちとは直接関係の無い企業に就職しても全く問題ないのだが、もしその企業が倒産したら、君達の場合はこの村を頼って欲しい、犯罪に手を染めるなんて事は絶対して欲しくないが、何かの間違いを犯してしまった時も同様だ。
この村は君達の第二の故郷として君達を守るために有る。
それでね、希望してくれる人がいたらだけど、私の養子という形を考えてくれるのも有りかと思ってね。
ただ、遺産相続とかは期待しないで欲しい、現時点で私に何か有ったら、ここの管理にも係わって貰っている谷川淳一社長に、資産の大部分を占める株式を相続して貰うという遺言状が妻の了承も得て、法的手続きを完璧にした状態で保管されているからね。
養子になってもならなくても同じ形で援助させて貰うつもりなのだが、私の娘、息子となれば多少のメリットが有るかもしれないと考えての提案なんだ。
ただ、問題は結婚式とかだ、君達の意見を聞いて実際に養子になって貰った後は、高校生を養子にして行きたいと考えている。
つまり、兄弟姉妹何人になるかはまだ決まってない、親となっても親らしい事は出来そうにないから高校生以上なんだけど、結婚式の様な行事は出て上げたくても難しいかもしれない。
ここの村人が私の代わりにとせざるを得ないと思って欲しいのだが、皆の意見を聞かせて貰えないだろうか。」
「お父さんになって下さい! 結婚式なんて気にしないで、滅多に会えなくても良いんです、今までも私の心の中ではずっとお父さんでした。」
「養子の話はともかく、俺も親父って呼んで良いですか?」
「本名として岩崎と名乗れるだけでも…。」
「岩崎社長が私達のお父さんになって下さったら、ふふ、私達は姉妹になるのね。」
「みんな岩崎じゃ不便なのかな?」
「義兄弟ってのも有りですよね、岩崎社長がお父さんで、ここにいるみんなは兄弟、戸籍は各自の都合で決めれば良い、でも気持ちは…、えっと…、家族かな…。」
「みんな有難う、今回の提案は私の思い上がりかもとか色々考えて迷いも有ったんだ、これから弟や妹が増えると思うし、中にはやんちゃな子も居るかもしれないが、そうだな、ほとんど名前だけの父親となってしまうかもしれないが許してくれるか。」
「許すも何も、なあみんな俺達が自立できれば弟や妹を増やせる訳だろ、岩崎社長には世界で一番子どもの多い大社長になって頂くってどうだ?」
「はは、それは面白いな、でも無理して私に心配掛けるなよ。」
「はい。」

会の途中から無言で泣いている子もいた、はしゃぐ子も、それぞれの思いは様々だったが雄太からの提案は訓練校のメンバーの心に届いた様だ。
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