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64-更生 [岩崎雄太-07]

谷川淳一が社長を務めるコンサルタント会社は順調に伸びている。
社員は岩崎学園大学の卒業生で固めた。
彼等の勤務地は日本全国に散らばっているが、基本的に本人の希望地を優先。
支社、支店の類はなく、すべてのデータは本社で処理している。
現地の社員は担当する企業を回り自分の目で現状確認、本社で整理された情報を元に改善策を練り顧客企業に提案。
検討した結果、改善が難しいと判断した案件は谷川に相談というルールは徹底されている。
見栄を張って自力であがく事は顧客に対して迷惑が掛かり、会社としてもマイナスだからだ。
谷川は、そんな難しい案件も短期間で解決していく、時には裏技的手法を用いる事も有ったが、誰も気が付かなかった一手を打ち出す谷川の手腕は天才的と評されている。
雄太からも絶対的信頼を置かれていて、必要が有ればグループ企業を動かす事も可能、すでに業務提携まで進んでいる企業も多い。
その動きは中小企業再編による地方の活性化を狙っての事、単に金儲けだけを目的としない姿勢が会社を伸ばしているのだろう。
そんな中、本社では。

「おい島根の話聞いたか?」
「ああ、過疎地の再開発に岩崎社長と谷川社長がゴーサインを出したんだろ、でも条件悪すぎるよな。
岩崎村でさえ、あのエリアと比べたらかなり好条件だったと言えるぐらいの所だぞ。」
「地方都市の再開発は基本現地で資金を確保しているけど、過疎地ではそうもいかないわね、岩崎社長が大きく投資されるのかしら。」
「ちょっと聞いてくれるか、まだ正式発表の前だが皆には理解して欲しい事が有って…、俺も島根のプロジェクトに係わっているんだ。」
「そうか、問題のない範囲で教えてくれよ。」
「あそこでは、刑務所から出て来た人の更生を考えてる、ちょっと考えてみて欲しいのだけど、罪を犯しました、捕まって刑務所暮らし、刑期を終えて出所、仕事が有りません、さあどうする?」
「簡単に金が手に入る道に非合法でも進みかねないな。」
「仕事が有れば更生出来る人も少なくないそうなんだ、だがそう簡単には行かないみたいで。」
「しかし、再開発の村が無法地帯となったりしないのか?」
「その村の再開発に携わるかどうかは本人が決める事、提案はするが誰も強制できないだろ、むしろ出所してすぐに住まいと仕事が有れば、落ち着いて社会復帰できると支援団体の人が話していたよ。」
「どんな仕事をして貰うつもりなんだ?」
「村自体の開発と、刑務所内で技術を磨いてる仕事が中心になるが、マーケティングはみんなに協力して貰えないかと思ってさ。」
「うまく行けば再犯率を下げられるという事なんだな。」
「ああ、犯罪者を減らし、過疎地の再開発を進めるという狙いなのだが。」
「ということは、快適な村にしないといけないわね、早めに。」
「問題は山積みだし、犯罪の起き易い環境になる可能性は否定できないが。」
「それでも、過疎地の再生に繋がるなら、私は協力するわ。」
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