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62-地方都市 [岩崎雄太-07]

秋山史枝が市長を務める地方都市は急成長している。

廃村から若者の力によって蘇った地のイベント広場をシンボルとする町は、商業と娯楽のエリアとして拡大、周辺の市町村からも多くの客が訪れている。
谷川達が仕掛けた、都会の流行に捉われず自分達の個性を発信して行こう、という取り組みが成功した結果でもある。
東京だけで流行を決めるんじゃない! 田舎者ですがなにか? 私の彼は養豚場で働いています、といったコピーは多くの若者にインパクトを与えた。
店は、廃村復活プログラムスタート直後に設立された株式会社が市民から資金を集める形で建設し運営している。
どの店も黒字になっているのは、谷川の指示の下、コンサルタント会社と岩崎学園大学の学生がマーケティング調査に基づいて運営に協力しているからだ。
ここで売られている商品は市内で製造された物が中心、地元の中小企業を潤わせている。
商業と娯楽のエリアから少し離れた所に製造業の工場が集まる工業団地を造成したのは雄太の関連会社。
そこには町中から大小様々な工場が移転し始めている。
移転を決意した企業のほとんどは、谷川の指導の下業績を伸ばして来た。
観光客の足を新しい商業エリアへ向かわせる企画も成果が出始めていて、この先も売り上げの増加が見込めると判断しての判断。
新たな宅地開発も進む。
町の再生に伴って、仕事が増えている、就職で町から出る若者が減っただけでなく、都会から故郷に戻る道を選ぶ人も増えている。
また、町の中心部から越して来る人も。
それは。

「谷川社長、市の中心部を区画整理しながら再開発というのはかなり時間が掛かりますよね。」
「恵梨香、それでも進めて行かないと次の発展に繋がらないだろ、勢いのない地方都市の中心部は信号だらけの狭い道路ばかりで快適とは言えない所が少なくない。
地権者の問題、予算の問題が有るだけでなく、人口の減少が見込まれる地域では手を付ける事も出来ないのだろうが。」
「そうですね、岩崎村に通じる地方都市も中心部はひどいものでした、大きな都市でもないのに。
人の流れが集中してしまうのはどうしようもないのでしょうか?」
「混雑は道路の構造にも問題が有ると思うが、人を大勢集めた方が効率が良い面もあるからな、だがここでは人口増加を見越して、施設の分散化を計っていける、君は今まで商業エリアの売り上げアップに大きく貢献して来てくれたが、そろそろ町全体のパワーアップにも目を向けて欲しいと思っていてね。
今、取り組んでる仕事は後輩に引き継いで、町の再開発計画に参加して欲しいのだがどうかな。」
「谷川社長が中心になって取り組んでおられるプロジェクトですか?」
「ああ、駅前の再開発を中心に官民一体となって検討、他の都市との差別化を計ろうとなったが、具体的にはこれからなんだ、押しの恵梨香に活躍して貰えないかと思ってね。」
「社長まで、押しの恵梨香はよして下さいよ、ちょっと熱心にお願いしてるだけですから。」
「はは、分かってるよ、他の連中が説得出来ない様な人でも、その人の心理を考えて説得に成功している君の能力に気付けていない連中も多いが、君のファンは多いからね。」
「でも、皆さんご高齢ですよね、私もそろそろ彼氏が欲しいのですが。」
「ふむ、これからプロジェクトを進めて行く過程で色々な出会いの機会を作ってあげるよ、優秀な人が集まって来ているからね。」
「社長、私、頑張ります!」
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