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51-村人 [岩崎雄太-06]

岩崎村の住人達には自分達で新しい村を作って行くという意識が強く、特に初期段階では多くの話し合いの場を持った。
その一つには、村と言うと人間関係が難しいと考える人が多いかもしれないが、そのイメージを払拭したいという思いが有った。
とは言え、移住してすぐに仲間だと言うのには無理が有る。
昔ながらの村とはまた違った人間関係の難しさが存在していた訳だ。
そこで、まずは二三人でも良いからグループを作ろうとなった。
初期メンバーは趣味もバラバラだったから、飲み仲間から始まる。
少なかった女性は大鹿の奥さんから色々教えて貰いながら互いの距離を縮めて行った。
人数が増えて来ると同じ趣味を持つ仲間も現れ、結びつきの強まる人達も。
逆に孤立しそうな人が加わる事も有ったが、そこは皆で支えた。

会社の拡大に伴って、少しずつサークルが出来始める。
古くて新しい伝統芸能の様なものに取り組む連中、バンドを組んだりアカペラボーカルグループを結成する者達、釣り同好会、スキー愛好会等が、仕事を終えてからや休日に活動。
それは村の発展と共に盛んになって行った。
モトクロスを始める者やクロスカントリーの大会に挑戦し好成績を収める人も。
美しい自然に囲まれた村で仕事をきっちりこなし余暇も充実した暮らし、それが岩崎村の生活として知れ渡る様になる。

村人の結びつきを強めている事に、お祭りやイベントも有る。
担当しているのは村の青年団、古臭いネーミングだという人もいるがレトロ感を気に入ってる団員も多い。
独身社員は全員メンバーになっているが実際の活動を強制される事はない。

「優は秋祭り実行委員会、参加するの?」
「微妙なのよね~、委員長の木下さんは素敵なんだけど、何となく長谷川さんと良い感じになってると思わない?」
「ふふ、婚約近しという情報も有るわね。」
「え~、やっぱそうなんだ、なら中田さんの学園祭応援委員会にしようかな。」
「あれっ? 中田さんはタイプじゃないって言ってなかった?」
「あの委員会にはね…、でもこれ以上は内緒。」
「上田さんなら彼女いるわよ。」
「え~、そうなの知らなかった~、麗子は私のこともお見通しか…。」
「限られた情報から多くの事実を掘り起こす事が私の仕事なの、普段からつい癖で、う~ん、優は佐竹さん知ってる?」
「温室の管理してる人? 話した事ないわ。」
「彼は秋祭り実行委員会のメンバーなの、委員会の仕事を通して、どんな人か知れば…、優とは合いそうな気がするのよ。」
「麗子有難う、麗子のお告げで何組ものカップルが成立してるのでしょ、うん、秋祭り実行員会に参加するわ。」
「ふふ、お告げなんて大袈裟よ、絶対成立する訳でもないし。」
「でも確率は高いし、成立しなかったのは麗子も知らない遠距離の相手がいたとか。」
「すべての情報を手にしてる訳ではないからね。」
「麗子自身はどうなの?」
「多分近い内に告白されると思うわ。」
「どんな人?」
「あまり話したことないから、よく分からないけど、しばらく健全なお付き合いしてみようかな。」
「告白して来るって、そんな雰囲気を醸し出しているのね。」
「優だったら気付かないレベルよ。」
「麗子は不思議な力を持ったお人だから…。」
「いいえ、ただの観察者よ、落ち着いて見てれば色々分かるの。」
「はぁ~、スーパーエリートって、凡人の私とは次元が違うって事なのね。」
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