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19-菜園 [岩崎雄太-02]

会社の仕事は週四十時間、残業は許されていない。
だが社員達も真剣に村の再生を考えている。
充分な給料を得ている事も有り残業代が発生する労働は避けたい。
サービス残業は絶対禁止。
そこで相談して決めたのは、会社の仕事、村の仕事と分ける事だ。
村の草刈りなどは村の仕事として会社の労働時間外に行う。
さらに、共同菜園、共同果樹園の用地を雄太に頼んで確保して貰い、ささやかな農業実習をしている。

「こうやって収穫出来ると嬉しいよな、このまま村人が増えても自分達の食べる野菜ぐらいは有る程度確保出来るんじゃないか。」
「ああ、大鹿さんに農業教えて貰うのも社長は仕事の一部と考えておられたそうだけど、それでは仕事が進まないからな、充分な給料も頂いてるし、皆で作業するのも楽しい、休日の朝は皆で作業が当たり前になって来たよな、強制参加じゃないが、参加しないと仲間外れの気分だぞ。」
「はは、その前にお目当ては誰なんだ。」
「女性社員が増えたとはいえ、競争率高いよな、水沢さんは佐藤副社長と良い感じになってるし。」
「でも、まだまだ小さい集団だからふられた時のリスクは大きいだろ。」
「まあ全員仲間なんだから、一緒に作業しながらお互いの事を知って行けば…、お前がふられた時は慰めてやるよ。」
「はは、頼むな、それより商品作物の候補はどうする?」
「高原野菜の定番と言えばレタスか?」
「絞りこむ必要はまだないよ、色々作ってみるだけの土地は有る、利益率とか考えて数種類に絞り込んで行けば良い、温室での蘭も計画規模から広げない方向性で、単一作物の大規模農場ではなくリスク分散型で、作業効率は落ちるだろうが比較的近い消費地中心に捌ければ、輸送コストを抑えられ鮮度を維持出来るというのが社長のお考えなんだ。」
「そうか、俺達林業チームは農業チームの動きを気にしてなかったけど、着実に動いているんだな。」
「ああ、お互い本格的に利益を出すのは先の事だが。」
「しかし、すごい金額の先行投資だよな、でもそれだけの投資が無かったら過疎地の再生なんて有り得ないだろう。」
「社長が相続した土地は所有者が複数じゃなかったから思い切った再生が出来る、だが悲しいかな、今俺達が住んでる村でも再生を画策してるのに利害関係から…、県道の整備関連で土地を高く売ろうとすしてる輩がいるんだ。」
「高く買うのか?」
「いや、今の所ただ同然で土地家屋を譲ってくれた人達との兼ね合いも有る、北部地区の県道は我々の活動に大きな影響もないから地主が亡くなるまで放置という方向性だ、元々社長が地元の人の暮らしを良くする一環で提案した事だからね。」
「生活が苦しいとかではないのか?」
「調べた範囲では、ただのお金大好き老人だそうだ、亡くなったら息子さんが沢山相続税を納めて社会貢献してくれるだろうね。」
「俺は生きて行けるだけの収入が有れば充分だ、ここで暮らしていれば老後の備えも簡単に出来そうだしな。」
「差し入れが多いから都会暮らしの時より良い物食べてる、貯蓄も大切だがこの村にとってプラスになる金の使い方を考えたいのだがどうだ?」
「菜園で採れた物を買い取って親戚に送ろうかな、始めは余ったら貰うという事も考えていたが金に余裕が有る。」
「成程、村営農場だから売り上げは村の金だ、その金で村を良くして行こう、村長とも相談だな。」
「ああ、バーベキューの時にでも提案してみよう。」
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