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115-旅立ち [キング-12]

旅立ちの時、城の住人は六十二人になっていた。
私達第一世代はそれぞれ十二人の子を授かり、尊達第二世代も四つのカップルが六人の子を儲けている。
町の人達は城の子の力を借りなくても生活出来るレベルに達していて、問題なく第二世代の子が増え始めている。
惑星は緑も増え、気候を調整していた装置は次の出番まで城の地下倉庫に眠る。

「旅立つ事を告げてから今日まで、城の子が国民にとってどういう存在なのか考えさせられたわね。」
「いや、子ども達だけではないぞ、麗子達も随分手作りプレゼントを受け取っただろ。」
「そうね、神に繋がると考えられているのかしら、十年後にどうやって迎えられるのか怖いわ。」
「さあ、ゲート前に集合だよ、お別れのセレモニーだ。」

城の全員がゲート前に立ってのセレモニー、涙する国民の多さは今まで苦楽を共にして来た思いと次に会えるのが十年後という現実によるものだろう。
さあ旅立ちの時だ、と言ってもすでに和の国コロニーは第十惑星の辺りをゆっくり移動中、まだゲートで移動できる距離な訳だ。
城に戻って各自担当作業をこなした後。

「翔、高速移動は始まってるのか?」
「ええ、一時間ほど前から。」
「城に居ると宇宙旅行の真っ最中なんて思えないな。」
「ゲートを通る事がなくなり国民に会えなくなった事だけが変わった事なのね、でも家族だけで過ごすって旅行気分じゃない?」
「そうだな、なあ尊、例えば半数が第四惑星に残るという選択肢はなかったのか?」
「絶対有り得ません、父さん達は城に住み続けて貰わないと困ります、それと子ども達に異なる時間経過を経験させたくありません、何より家族が離れ離れになるなんて嫌じゃないですか。」
「そうですよ、子ども達の恋愛対象が減る事にもなりますからね。」
「町に残った十歳の子が二十歳になる頃、十歳で宇宙旅行に出かけた子が十一歳になって帰って来るなんて家族の中では嫌じゃないですか。」
「という事はこれからもずっと一緒か?」
「はい、当分の間はこのコロニーだけで充分ですし、人数が増えても二つのコロニーが残して有ります、まだ三十ぐらいのコロニーを作るだけの材料も持っています。
その材料も、これから行く恒星系で原料が見つかるかもしれません。
ただ、種族として充分な人数になったら選択肢が広がって行くとは考えています。」
「やはり類としての進化を目指すという事か?」
「そうなると思います、マリアさまとも議論しているテーマです。」
「うん、でもまだ人数も少ない、これからだな。」
「はい、何年も先の事です。」
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