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113-町 [キング-12]

翔が二十歳になる頃には、町は随分立派になっていた。

町から一直線に南に延びる道を行くと海、魚や貝などの養殖をしている。
養殖場以外でも、和の国の海辺から移した海藻、蟹や海老、貝などが自然な環境を作り始めている。
養殖場で稚魚を育て始める時など、機会有る毎に何匹かずつ放流してきた。
自然に繁殖している種も有り魚類も確実に増えている、まあ、海の広さを考えたらまだ微々たるものだが。
城の子が作り出した自然はかつての地球に少しずつでは有るが近づきつつある。
養殖作業で使っているのは木造の小型船、造船はまだ大海原へ漕ぎ出すという段階ではない。

海へ向かう道の両側が住宅街、城の住人を除いた全員がこのエリアに住んでいる。
建物は落ち着いた西洋風に統一された。
この国が多民族の集まりと言う特性上建設当初は揉めたが、それを収めたのは巴の力だ。
私の娘はいとも容易く国民の意見をまとめた…、というよりは彼女の案を受け入れさせたと言った方が正しいだろう、大人達はなぜか彼女に逆らわない。
親としての後ろめたさは多少有るが、綺麗な街並みが完成した事は嬉しい。
住宅の敷地面積が過去の数倍だと喜こんでいる大人も多い。
子ども達は成長し結婚する者も出始め、彼等の新居が増えつつ有る。
町の中心部には行政関係の建物の他、国営の商店や飲食店が立ち並ぶ、と言っても規模は小さなものだ。
ゴールドを必要とする店は中央広場から東よりに、自由に持ち帰れる食材などを置いてある店?は西よりに位置している、西のエリアには学校も建てられた、その先は森林…、を目指している。
中央広場には大きな建物が有り、その中にはゲートが鎮座。
北へ一直線に伸びる道の両側はまず野菜畑から始まる。
トマトなどその日食べる分を必要なだけ収穫といった野菜が近くに、根菜類は遠くにと配置。
さらに北へ進んで行くと、小麦畑や水田と続き家畜のエリアとなる、鶏や豚が広い敷地で飼われ、最後は広大な牛の放牧場となっている。
移動の主な手段は馬と馬車、大人達は結構気に入っていて自動車はいらないと言う。
自然回帰という感覚だろうか。
だが、この環境に馴染んでしまって科学の発展は有るのだろうかとも思う?
否、この環境が有ったら、科学を発展させる意味は有るのだろうか。
人口が増え過ぎればいずれ破たんするのだろうが…。
その時は城の子…、孫とか子孫が他の惑星への扉を開けば良いのではないかと考えてしまう。
東のエリアには金属を保管する倉庫が作られ、その先は研究所と工場。
マリアの技術に頼ってきた事も少しずつ地球の技術に置き換わりつつある。
町の周辺には且つて雑草と呼ばれていた植物が広がり昆虫の種類も増えている、それらを餌とする小鳥も飛び交う様になった。
一つの星に一つの町、少しずつ大きくなっていく町は徐々に城の子の手を離れて行こうとしている。
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