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110-経済 [キング-11]

通貨ゴールドは国民達に浸透した。
子ども達は学校の行き帰りに畑の手入れをする、そのついでに家族が必要とする量を収穫して帰る。
手入れの時間は労働時間として加算、自己申告制だが教育の成果か過小申告する者がいても過大に申告する者はなく、ゴールド導入と共に監視を強めていた我々を喜ばせた。
麦、米といった作物は倉庫に充分な量が保管されていて、必要とする量を自由に持ち出せる。
肉は冷凍庫で保管、こちらは慣れた担当者が希望に応じて切り分けている。
肉を得るにも対価としてのゴールドは必要ない、国民共有の食料だからだ。
ゴールドを必要とする商品は普通に暮らして行くだけなら必要のない物。
始めの頃はその線引きや価格に戸惑いも有ったが今は落ち着いて来ている。
嗜好品はゴールドを必要とするが高額ではない。
お菓子を買うために畑仕事をしている子もいるが、妹の分も買う様な子どもばかりだ。
大人達が酒を奢り合っているもゴールドに余裕が有っての事。
ちなみにタバコはマリアの意思により存在しない。

そんな中で一番頭を悩ませたのは家だ。
第一世代の住居はすべて無料だったが、第二世代が結婚して住む家をどうするか、土地はマリアから借りるという形で無料、だが建物を建てるにはそれなりの手間が掛かる。
結局は、結婚に向けてそれなりの覚悟を見せるべきとの声も有り、高額だが分割での支払いを許すという形になった。
真面目に働けば二十年掛かる額としたが、出産祝いの形でゴールドを受け取っていけば大した負担にはならないというシステムに落ち着いた。
子どもが欲しくても授からないケースも想定されたが、育児に手が掛からなければゴールドも得やすい。
微妙な物としては絵画が有る、ゴールドで買った絵画は売る事が出来るのかという問題だ。
これは購入金額の半額で国が買い取る事になった。
投機的な要素を排除する形として成立に至った訳だ。
絵は競売に掛けられ、高値で落札された絵の作者にはボーナスが支給される。
他の芸術家達もその人気度によってボーナスを受け取っている。

この国の特徴的な事は税がないという事だ、国が支払ったゴールドは贅沢品の購入やイベント参加の対価として国に戻される。
税務署も税務職員も必要ない。
役所として重要なポジションに有るのは計画局だ。
主に工業製品の開発、生産計画、都市計画などを行っている。
必要な物が揃うまでには長い年月が掛かりそうだが。
農業に関しては、細かい計算をして受給バランスを考えてという事はしていない。
食料の生産が消費を完全に上回っているからだ。
余った作物は緑地を広げるのに使われ、野生に近い鶏や豚も存在する。
国民は緑地を広げる事に熱心なのだ。
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