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105-発表 [キング-11]

第二回のゲーム、数学は静かな盛り上がりを見せた。
数学に挑戦出来るだけの力量を持つ大人にとっても他の参加者の力は未知数。
参考問題の形式は、一人の大人と三人の子どもが組めば得点を稼げる設定。
大人二人と子ども二人の組み合わせが決して有利と言えないのは問題が共通語で出題されている事による。
また、エントリーまでの早い段階で一部の大人達が子ども達の力を伸ばしたいと主張し大人一人子ども三人によるエントリーを提案、結果全部のグループがそれを受け入れた。
参加を決意した大人は三十一名、彼等はエントリーに向けて身近な子ども達の力量を計る。
ここで、コロニー時代の国にこだわる者もいたが、幸いな事にその多くは人種に関係なく仲間集めをしてくれた。
おかげで、数学の成績が優秀な子ども達は漏れる事無くエントリーを果たした。
ゲームの模様は簡単にモニターで紹介されたが、問題の解説は詳しく行われた。

「尊、問題解説はほとんど数学の授業だが、予想してたより見てる人多いぞ。」
「そうか…、翔、結果を見てみると、思ってたより子ども達の学力が伸びてると思わないか。」
「ああ、リーダー役の大人達による指導の賜物だろう、新たな師弟関係が上手く構築されつつ有るのかな。」
「やはり民族にこだわったチームは成績が悪かったな。」
「結果を見て反省してくれれば良いけど…、それよりこの後の色々な発表に国民がどう応えるか微妙だよな。」
「ちょっと不安だよ…。」

今回の発表はすべてモニターを通してとなる。
ゲーム、数学の結果発表は巴と香によって、その後は尊が。

「今回の結果、子ども達の力がすごく伸びている事が分かりました、指導して下さった各チームリーダーの方々に感謝します。
さて、ここで皆さんにお話ししておかねばならない事が有ります。
今、この惑星はマリアさまのテクノロジーをお借りして開発しています。
この状態はしばらく続きますが、徐々にその比率を減らし、国民の皆さんによる自給自足、大人の皆さんがかつて地球で利用していた技術へ移行して頂きます。
これはマリアさまのテクノロジーが学習によって習得できるものではないという事実と材料に限りが有るという事によります。
今日は今まであまりお見せして来なかった、僕の力を見て頂きたいと思います。」

その光景は国民にとっては異様だったと思う。
尊が手にしたのは翻訳機、それが突然姿を変え銀色の塊になったと思った瞬間モニターに変わっていた。

「気付いておられた方もいらっしゃるでしょうが、今、この世界には三つの大きく異なる人種が存在しています、一つは長く遺伝子を受け継いできた人類の末裔である皆さん、その遺伝子の一部をマリアさまが変異させる事に成功したという父をはじめとする城の八人、そして僕達城の子どもです。
マリアさまから託された僕らの役割は生物が住める惑星を増やす事です。
皆さんにお願いしたいのは、惑星を平和で豊かな星にして行く事。
もちろん時間は掛かります、この惑星の開発だけでも何十年何百年と掛かるでしょう。
でも、これはマリアさまが人類に与えて下さったチャンスなのです。
地球で培われて来た科学技術をここで復活させ間違っていた所を訂正し、もう一度、類として進化する、その為にはマリアさまのテクノロジーに頼り切っていてはいけないのです。
でも皆さんの文化レベルを大きく下げたくは有りません、そこで数学に挑戦して下さった方々などと、新たなプロジェクトをスタートさせたいと考えています、地球の文明については色々教えて頂いています、それを復活させ発展させるというプロジェクトです。
また政治に関しましても…。」

尊の話は続いている。
国民はこの話をどう受け止めるのだろう、不安は有るが方向性は変えられない。
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