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104-遊覧飛行 [キング-11]

リレーの御褒美である惑星一周遊覧飛行は、国民に惑星の状況を知らしめる機会となった、翔が映像を編集しモニターで見れる様にした事による。
広大な海はともかく延々と続く不毛の大地はこれからの困難さを思わせるのに充分。
城でも作業の合間に映像を見ていた。

「夢は落ち着いて解説してるね、解説の合間に流してるのは夢の歌声でしょ、麗子の次女は最近一段と綺麗になったわね、容姿も歌声も。」
「同じ遺伝子の筈なのに兄弟で本当に違うのよね、まあ容姿の良さと性格の良さは共通してるけど。」
「夢は今まで裏方中心だったろ、何か考えが有るのかな?」
「尊は色々な仕事を経験させたいと話していたわ。」
「それは間違ってないな、尊達がマリアさまの生徒になった頃は四人で進めるしかなかった事も、今では二十四人で分担、でも兄姉を頼る気持ちが強そうだったから。」
「機内の映像は昇が担当してるのか。」
「ふふ、ようやくお客さん達の緊張がほぐれてきたというか、城の子達のもてなしを受ける事に耐えきれなくなって手伝い始めたわね。」
「それも良い、彼等にとっては一生忘れられない思い出となるだろう。」
「おっ、あれがジャングルか、結構な面積になってるじゃないか、どうやったのだ、誠。」
「まだ雨が都合良く降ってくれないから、なだらかな山の中腹に幾つか池を作ってその周りを緑化、そこだけは肥料も与えて生長の早い木を植えたんだ。
川はまだ自然じゃなくて、ほら海まで届いてないでしょ、あそこからパイプを使って池まで戻している、最初の頃は水の補充を随分したけど今はたまの補充で済んでる、でも緑が増えたら自然な川になると思う。
川の岸辺には草の種を蒔いたり、切った木の枝を転がしたり、枝からすぐ根や芽が伸び始めるんだ。
少しの手間で多くの緑が広がって行くから楽しいよ、この大陸の赤道付近はすぐ緑に覆われると思うな、でも他の実験場は木の生長がここ程早くないから、手間も時間も掛かりそうだよ。」
「だろうな、箱舟には様々な環境で生きて来た生物がいる…、ところで動物はどうするんだ?」
「餌の生長を待って猿や鳥から、その糞が肥やしになるでしょ。
ここでは魚が増えたらワニを解放するんだ、増え過ぎてしまう様ならこちらで捕獲して皮は加工、肉は…、美味しくなかったら養殖魚の餌とか。」
「なるほど、まずは利用価値の有る肉食獣からという事なんだな。」
「うん。」
「ジャングルから海か、海はあっちも綺麗だな。」
「でもまだ魚は少ない、海藻と一緒に小さい魚を放した成果が出るのはしばらく先みたいだよ。」
「いずれ世界中の海に広がって行くんだろうな。」
「早くイルカやクジラも解放してあげたいけど、餌が充分過ぎる程に増えないとね。」
「今度の画面は牧場か、随分移動した訳だな。」
「ここは愛ちゃんが担当、牛がこの管理されていない状態で健康に育ってくれるか試してるんだって。」
「野生の牛か…、それにしても随分広いな。」
「木が育つには時間が掛かるけど、牧草は早いみたい。」
「こっちは小麦か?」
「種に余裕が有る作物は多めにばら撒いているんだって、養分が充分ではないから痩せてるけど。」
「緑地は順調に広がっているという事か。」
「でも荒野の広さを考えたらまだまだだよ。」
「そうだな。」

遊覧飛行の映像を見た国民達からは町周辺の緑化速度を上げたいとの声が上がった。
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