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87-希望 [キング-09]

尊達の訪問は全く予想していない展開となった。
彼等は尊と巴を跪いて迎え入れたのだ。

「これは驚いたな、翔の映像効果か、麗子の食事が効いたのか、何にしても上手く行きそうだな、翔。」
「はい、僕らが観察してる中でも危険は感じませんでしたが、こうなるとは思ってもなかったです。」
「手土産も押し頂くという感じね。」
「この形でスムーズにコミュニケーションは取れるのか。」
「彼等は共通語に挑戦していますね。」
「記憶の蘇りは静子さんと対面してスイッチが入り数分後に始まるという予定だったでしょ。」
「その筈だが、未だに冷静だな。」
「輪を作って話し始めた、愛、何を話してるのか分かるか?」
「だめです、初めて聞く単語が多すぎて。」
「尊達はにこにこしながら聞いてるが。」
「たぶん分かって無いと思います。」
「でも頷いてくれる人がいれば、心が軽くなるのかな。」
「泣いてる人もいますね。」
「それでも表情が穏やかに感じる。」
「尊が端末に手を伸ばしたぞ。」
『愛、お茶を頼めるかな。』
「はい、すぐに用意するわ。」
『ここの子達と一緒に持って来てくれるか、望。』
「分かった。」
「全く危険を感じてないという事か。」
『翔、予定より早いがここにテレビ電話を設置したいが。』
「ああ、すぐ持ってくよ。」
「キング、この状況はどういう事でしょう。」
「親衛隊隊長、彼等はコロニーでの生活に苦労していた、蘇りつつ有る過去の記憶も良いものだったとは思えない、だが、翔の映像や実際に尊や巴に会って、彼等に希望が芽生えたと考えられないか。」
「あっ、そういう事ですか。」
「その希望をさらに強く感じさせる為に、尊は子ども達を呼んだのさ。」
「なるほど、ここの住人とは早く仲間に慣れそうですね。」
「ああ、そうして行かないと、先は長いからな。」

その後は交代で夕食を差し入れたりしたが巴が戻った後も穏やかに進行した。
記憶の蘇る苦しみ以上に、狭いコロニーでの先の見えない生活から解放される喜びが大きかったのかもしれない。
今回の事で我々を待っている人達の気持ちが分かった気がする。
子ども達も、これから出会う人達へ一刻も早く希望の光を届けたいと話してくれた。
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