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77-都市伝説 [キング-08]

八人の大人が城で暮らす様になってから、ここの暦で八年と九か月、城の子ども達は居住コロニーなどの大改造を始めた。
その結果、世界の住環境が大幅に改善されつつある。

「子ども達の働きに戸惑いつつも、改修作業の結果は喜ばれているな。」
「寝る為だけに戻ってた居住コロニーが住み易くなって、国民の生活パターンにも変化が見られるわ。」
「農場の作業効率も上がり、マリアさまに捧げる余剰食糧も増える一方ね。」
「需要があるそうだが、何にしても余裕が有るに越した事はない、七カ国の人達は七つの言語の壁を越えて協力、世界を楽園にしようと…、過去の世界の事を考えたらすでに楽園と呼べるよな。」
「そうね、大人達の表情も随分穏やかになったわ、老け込んでた連中も若干若返った感が有るわね、争う理由が無い事に気付き始めたということかしら。」
「マリアさまを信仰の対象にしたのが良かったと思うわ、過去の神様たちは安らぎ以外に争いを与えて下さったけど、マリアさまは子ども達を通して、目に見える形で生活環境を改善してくれている。
マリアさまが何時も見守って下さっていると信じられているし、私達の監視を通して小さな揉め事も減らせているからね。」
「ほとんどの不満は解消出来てると思うが、見てる時に口に出してくれないと分からない、拾いきれているのだろうか。」
「ならマリアさまからのお告げという事にして、不満や希望が有ったら、そうだな…、城の正面にある欅の大木に向かって声に出して願えば叶う場合も有るってどうだ?」
「そうね、でもお告げより、まずは都市伝説的に噂を広めるってどうかしら、願いが叶わなくても諦めやすいでしょ。」
「そうだな、やってみるか。」

麗子と八重は翌日、食堂でさりげなく会話。

「ねえ、欅さまってどう思う?」
「一花は信じてるみたいよ、欅さまにお願いしたから誰よりも早く子を授かったのかもって。」
「偶然かもしれないけど、ちょっぴりロマンティックよね。」
「三之助は、声に出して自分の希望を言うことは大切だって言ってた、不満を持っていても黙ってたらマリアさまに届かないってさ。」
「そうか、まあ私等不満もないし、願い事は世界平和だから…、でも念の為に世界平和を欅さまにお願いしておく?」
「そうね、自分の気持ちの再確認になるのかな。」

二人が結構下手な芝居を打つ事になったのは、彼女達が何の不満もなく暮らしている事による。
それでも二人の会話は数人の耳に届き、都市伝説を始める事に成功した。
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