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71-映像 [キング-08]

二日目は静かに経過した、だが城の住人による夜の会議は普段とは違って少々熱を帯びるものになった。
ブラックコロニーの監視映像が原因だ。

「城の子が子ども達の世話に時間を取られてて良かったな、こんな映像見せたくないぞ。」
「差別意識が、記憶のプロテクトが外れ始めてからさらに膨れ上がったみたいね。」
「一応プロテクト解除に伴う苛立ちが落ち着くまで待ってみようとは思う。」
「自分達が罰を受ける事無く、和の国を亡ぼす方法を考え始めるとは思わなかった…。」
「どんな手段を考えるのか興味深い、わくわくするな。」
「う~ん、確かにそうなんだが…、この国の芸術文化系コロニーって確認できたか?」
「えっ、もしかして。」
「今までの調査では何も…、芸術的な犯罪って事なのか?」
「それっていらないでしょう。」
「二十人の子ども達の中で彼等の子は十一人、子ども達が受け継いだかもしれない資質は無視できないかも。」
「それより親達はどうするの?」
「隔離は出来てる、このまま居住コロニーで一生を過ごして貰う事も可能、チャンスを与える事も可能、ただ彼等の一生を私達の一存で決めるというのは、リーダーの役目とはいえあまり気持ちの良いものではないな。」
「かと言って、外に出したら、静かに和の国滅亡計画を実行する訳だろ。」
「もし彼等が動いたら、どれぐらいの人が乗るのかな。」
「今は和の国が好きな人でさえ説得されるかもよ、それぐらい言葉巧みな人がいるの。」
「子ども達の試練を増やすか減らすかという問題でも有るな、試練によって鍛えるか、要らぬ試練から守るか。」
「鍛えるのはもっと先で良いと思うわ、第一世代の問題は私達の責任でしょ。」
「だな、まずは観察させて貰おう、そうだ、いっそこの映像を編集して娯楽映画とか作るか。」
「作れないでもないが、彼等の子ども達の目に入る可能性も有る、記録として他国のリーダーに見せる程度にすべきだろう。」
「いや極秘にすべきだ、我々に監視能力が有る事が他国にばれてはまずい。」
「だがそれでは他国に対して説明しづらくないか。」
「嘘発見器を使った事にすれば良いのじゃないかしら。」
「回りまわって私達の嘘がばれる事になるだろう。」
「ブラックコロニーが存在する現実を考えたらスパイ能力を他国に与える事は極力避けるべきだな、他国への説明は何とかするから、端末の機能は隠しておこう…、ハッキングして他国の端末から削除しておく事も可能だ。」
「スパイ活動も世界の安定の為には必要なのかな。」
「気持ちの良い事では無いけど私達の役割を考えたら綺麗ごとばかり言ってられないわね、寿命を縮める行為を未然に防げるかもしれないし。」
「今日の監視では今回の作戦活動が和の国主導で行われている事に不満を感じているスコットランド人が見つかった、今は今後のフォローを考えてる。」
「今日の様子なら私達は一歩下がっても大丈夫そうよね。」
「疲れたとか適当な理由を見繕ってスコットランドにメインの管理をお願いしようか、私達はモニターで監視に専念かな。」
「でもいずればれるかも。」
「その時は平和の為に監視してましたって、でも嫌われるだろうな。」
「嫌われる日をなるべく先延ばしする事を考えようか。」
「そうだな。」

人を監視する事に抵抗は有る。
だが、監視をしっかり出来ていれば新島の悲劇は防げたかもしれない、他の人達だって罰を受けずに済んだかもしれない。
国民の小さな不満でも知っていれば解決できるだろう。
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