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59-端末 [キング-06]

緊張の面持ちで座っているのは、私と麗子の子北城尊、セブンと一花の子西條翔、三郎と三之助の子東城望、ロックと八重の子南条愛の四人、緊張するなとは言ってみたが無駄だった、マリアはこの世界に於ける神の様な存在だ。

「まずは君達にマリアからのプレゼントが有る、机の上の箱を開けてごらん。」
「あっ、これって翻訳機…、じゃないよね。」
「尊、この端末は翻訳機としても使えるがそれだけじゃない、電話としても使えるし他にもな、各国のリーダークラスが使っている代物だ。」
「それを僕達一人に一台ずつか、すごいや。」
『気に入ったか?』
「あ、マリアさま? 有難う御座います。」
『まずはキングも知らない機能がその端末には備わっている、それを今から教えるが良いか。』
「はい。」

子ども達は元気よく返事をした。
私が知らなかった機能とは翻訳機能への入力だ。
構築中の言語の音声情報、文字情報、言葉の意味といった所を一つの言語と対応させて入力すれば良い、複数の言語と対応させればさらに精度が上がるとマリアに教えられた彼等は夢中になって取り組み始めた。
マリアの口調は私と会話している時より随分優しく感じられる。
食事は部屋に届けて貰う様に指示を出し、子ども達を観察する事に。

『なぜ、私、僕、俺、あたし、といった複数の言葉に対して、一つの言葉を当てはめたのだ、愛。』
「それはね、英語とかだとアイって一つだけで済んでるからなの、私達はなるべく簡単にしようって決めたの。」
『ではアイで良くはないか?』
「英語を使ってる人達は喜ぶだろうけど、そうでない人は抵抗を感じるかもしれないでしょ、良く使う言葉は七つの言葉とは違うものに、全部変えると大変だから物の名前とかはどこかの言葉のを使うけど、なるべく七つの言葉をバランス良く、三之助おばちゃんからのアドバイスよ。」
『国民達がキングに話す時の言葉は少し違うが、どうするのだ、翔?』
「マリアさま、敬語って言うんだけどね、僕らの言葉には要らないんだ、心に尊敬してますってイメージしてたら自然と伝わると考えてね。」
『それは君達が考えた事なのか?』
「もちろんだよ、でも三郎おじさんに話したら、それで良いって。」
『今まで使って来た言葉はどうする、忘れるのか、尊?』
「忘れる必要はないし、今使ってる言葉も嫌いじゃないんだ、ただ、七つの言葉を覚えるのが大変そうな子もいるから共通語をね、色んな国の子達と遊ぶ時に便利でしょ。
それでも自分の国の言葉と、二つを覚える事になるから、なるべく簡単にしようって決めたんだ。」
『成程、では文字にはどんな考えが有るのだ、望?』
「文字はまだ考えてる最中なの、アルファベットは文字数が少なくて便利だけど、漢字は意味があって便利、だからまずは二十の文字でどんな言葉も表せる様にする、その後で漢字みたいなのを作れないかなって考えてるのよ、母さんが漢文というのを教えてくれてね、皆すご~いって思った。
難しいからすぐには出来ないけど、上手に作って覚えたら早く読めるでしょ。」
『ああ、私も興味を持って調べた、子どもにとっては随分難しそうだ、多くを記憶する必要も有る。』
「作るのも覚えるのも大変だけど、難しいと感じない人にとっては便利でしょ。」
『全員が覚える必要は無いという事か。』
「ええ、二十の文字だけでも読み書き出来る様にしてから、良く使う言葉を選んで漢字みたいなのを作ろうって考えてるの。」
『ならば、その端末が役に立つ、食事の後は共通語作りの作業を続けるか、端末の使い方を覚えるか、どちらが良い…、どちらが良いかな?』

子ども達はすぐ結論を出した、端末は彼等にとっては新しい面白いおもちゃでしかない。
色々試しながら四時頃には一通りの操作を把握、初日の学習を終わりとした。
子ども達の能力の高さは感じていたが、これ程までとは考えていなかった、言語に関しても学習能力に関してもだ。
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