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57-説得 [キング-06]

翌日からリーダーのモハメドに同行、テレビ電話を通して一人ずつ話を聞く。
三日目には八人全員と直接会って話をした。

「キング、彼等はどう? 少しは落ち着いたの?」
「ああ、問題点も整理出来つつ有る、一つは我々が経験した戦争の原因が欧米諸国に有ると信じている事、もう一つはモハメドと対立していたから、今更モハメドの下では暮らしたくないとの事だ。
過去の対立そのものは心の整理が出来つつ有るみたいで、忘れると話してくれた、対立の原因がここにはないと気付かせる事に成功した訳だ、それで今後どうしたいかと尋ねた所、和の国の一員にして欲しいと言われた、差し入れたおいしい食事の力も有ったのだろうな。」
「しかし、それではモハメドが…。」
「今、こっちに来ている大人達と話し合ってる。」
「まあ、問題はないと思うな、昼間はどちらで働いても良いし、他の五か国とは少しづつ距離を縮めて行けば良いだろう、モハメドがどんな結論を下すかだな。」

モハメドが出した結論は私の下に就きたいという事だった。
リーダーとしての資質は国力の差に歴然と現れている、このまま自分がリーダーの地位に留まる事は国民の寿命を短くする事に繋がりかねないと判断、和の国の豊かさを目の当たりにした他の大人達も賛成した。

「四十三人の国民が増えても全く問題はないけど、住居はどうする?」
「落ち着いたら元の居住コロニーへ戻って貰う、ここでの生活は緊急避難に過ぎず彼等に許されている事ではない、仕事の割り振りは、彼等の希望を尊重しながらこちらで行う、ただ余裕は有るのだから急ぐ必要はない。」
「向こうのエリアはどう呼ぶの?」
「過去の地名とかは忘れたいそうだが。」
「こちらを和の国本島、向こうを新島ってどうだ?」
「海が無いから新島って感じじゃないが。」
「それも焦らずに彼等からの提案を待っても良いと思うわ、正式名称が決まるまで暫定的に新島でも良いと思うわよ。」
「そうよね、相談して行きましょう、でも最大の問題は他の国と仲良くしてくれるかどうかよね。」
「誰もあの攻撃の犯人は分かっていない、彼等の歴史を考えたら疑うのは当然だろうがな。」
「説得するにしても根拠がないからやっかいね。」
「時間が掛かっても仕方ないが…、子ども達に変な伝え方をさせない事が最優先だ、他国は敵だとか教えられたら大問題だぞ。」
「そうだな、子ども達の世代の為に我々が有るという事を、彼等にももう一度確認しないといけないな。」
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