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56-受け入れ [キング-06]

十五人の大人と二十人の子ども達が城下町で暮らし始めた。
彼等の国に残っている八人は居住コロニーから出られない状態になってはいる。
だが、食料を与える時の他、リーダーとの対話でゲートを開ける可能性も有り、まだ安全とは言い切れない。
一部の大人は昼の間、畑仕事の為などで自国へ戻っている、その手伝いに同行した者達は、我々にとっては魅力に乏しい国土だと話す、だが将来この面積ですら貴重な土地になる可能性は否定出来ない、今以上には荒らさず維持して行きたい。

「麗子、食事は彼等の口に合ってるのか?」
「分からないわ、あの人達がかつて口にしていた味付けが分からないもの。」
「ふふ、大きな声では言えないけど、おいしすぎて怖いそうよ、背徳の味覚なんじゃない、皆さんにとっては。」
「えっ。」
「日本食よ、彼等にとっては長らく対立していた国の食事でもなく、材料に乏しい自国で食べ飽きた食事でもなかったのでしょうね。」
「そうか…、よし、日本食マニアを増やそう。」
「はは、でも、そろそろ自炊の環境も整えてあげないとな。」
「食材とかの相談はしてるのよ、でも今は蘇って来る記憶の整理に追われてる段階で余裕が無いみたいなの。」
「そうだった、しばらくは見守るしかないな。」
「各国から手伝いも来ている、この平和で豊かな社会を見て、何が真実なのか分からないって人もいるのよ、この世界でのスタートやその後の展開も基本は同じだったと知ってね。」
「国民性の違いとかリーダーの力量とかが違ってた訳だな。」
「子ども達は?」
「向こうの三歳以上は五人だから今の所一年生だけで相手して貰ってる、翻訳機は向こうから持ってきた内の二台を子ども専用にした、うちの子ども達は私達が何を期待してるか理解していて先方の子達の不安を和らげているよ。」
「初めての言語に対する反応はどうなんだ?」
「もちろん好奇心の塊だから、四人で言語の分析も始めてる、俺達が思ってた以上に天才かもしれない。」
「残る八人の説得は?」
「記憶の蘇りが落ち着くまではだめかもしれないが、モハメドを手伝ってみようと思う、ヨーロッパとも関係ない第三者だから説得し易いだろう。」
「確かにキングが適任かもしれないな。」
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